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「闇バイト」の温床? スポットワークアプリは全面禁止した方がよいのか働き方の見取り図(2/2 ページ)

ネット上では「犯罪に加担して収益を上げていいわけがない」――などとスポットワークアプリに対する厳しい声が聞かれる。危険性を考慮して、スポットワークアプリは全面禁止にした方がよいのだろうか。

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全面禁止にすればよい……のか?

 ただ、闇バイトは人の命が奪われることさえある凶悪犯罪です。危険性よりも利便性が優先されてよいはずがなく、スポットワークアプリをめぐる規制整備は大切だと思います。

 闇バイト募集に利用されないようにする最も確実な方法は、全面禁止にすることでしょう。しかし、そんな極端な方法がベストなのかどうかについては、慎重に検討する必要があります。

 例えば自動車は、とても危険な乗り物です。1トンほどの鉄の塊が、時速100キロ以上の速度で進む能力を有し、見方を変えれば走る凶器ともいえます。警察庁によると、令和5年の一年間で発生した交通事故は30万7911件。死者数は2678人に上ります。

 交通死亡事故をなくす確実な方法は、自動車の製造も販売も運転も禁止にすることです。しかし、自動車を禁止すれば社会は基幹となる移動手段の一つを失うことになります。利便性は大きく損なわれ、自動車に携わる製造や販売、運輸業といった産業もなくなります。

 社会は事故が起きるリスクを承知の上で、自動車の便利さを選択したことになります。交通事故死者数は昭和から平成の初めまで1万人を超えることさえ珍しくありませんでした。それが2000人台にまで減ったのは、シートベルト着用義務化や飲酒運転の減少、エアバックの設置など、ルール設定やさまざまな工夫による成果です。


写真はイメージ(ゲッティイメージズ)

「闇バイトチェック AI」開発する事業者も

 スポットワークアプリも禁止すれば、テクノロジーの進化によって手に入れた即就業・即採用できる機能が失われてしまいます。働き手にとっても求人企業にとっても不便で、採用活動をめぐる生産性も下がります。社会の進歩発展に逆行する施策に違いありません。

 テクノロジーの進化は、リスクも伴う一方、常に社会に新しい機能と利便性を提供してきました。新たに生み出された機能が社会にとって有益ならば、危険だからと禁止するのではなく、安全に利用できる方法を導き出す必要があります。

 スポットワークアプリもまた、インターネットやスマートフォンといったテクノロジーの進化が生み出した、社会に役立つ新たな機能です。スポットワークサービスを利用する登録者数は2500万人に及ぶともいわれます。徐々に社会インフラとなりつつあるサービスが抱えるリスクにだけ目を向けて禁止するのではなく、利便性との兼ね合いを考慮しながら、安全に利用するための知恵を絞ることが求められます。

 タイミーは闇バイトに関する一連の問題を受けて、悪質な募集を見かけた際に報告できる通報ボタンを設置しました。スポットバイトルを運営するディップは求人情報内から効率的に闇バイトを検知できるツール「闇バイトチェック AI」を開発するなどの対策をとっています。テクノロジーが向上すれば、求人掲載の事前確認も、AIなどを使って瞬時に対応できるようになっていくことも考えられます。

 働き手も求人企業も同様です。どんなリスクが伴うのか頭に入れて自己防衛する必要があります。闇バイトをめぐっては、警戒心を和らげようと求人に「ホワイト案件」や「リスク無し」などの文言を記載する例が知られています。こうした情報も古くなっていくことを前提にアンテナを張り、都度更新していかなければなりません。

 また、スポットワークアプリを運営する事業者は、利便性と安全性を両立させるための技術開発や自主ルールの設定など積極的に自浄作用を働かせていくことが求められます。もし、他社との競争に勝つことばかりに目を奪われて自浄作用が後手に回ってしまうようだと、社会が利便性よりリスクを問題視して、全面禁止されるような事態へと発展しても致し方ないのではないでしょうか。

著者プロフィール:川上敬太郎(かわかみ・けいたろう)

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ワークスタイル研究家。1973年三重県津市生まれ。愛知大学文学部卒業後、大手人材サービス企業の事業責任者、業界専門誌『月刊人材ビジネス』営業推進部部長 兼 編集委員の他、経営企画・人事・広報部門等の役員・管理職を歴任。所長として立ち上げた調査機関『しゅふJOB総研』では、仕事と家庭の両立を希望する主婦・主夫層を中心にのべ5万人以上の声を調査。レポートは300本を超える。雇用労働分野に20年以上携わり、厚生労働省委託事業検討会委員等も務める。NHK「あさイチ」他メディア出演多数。

現在は、『人材サービスの公益的発展を考える会』主宰、『ヒトラボ』編集長、しゅふJOB総研 研究顧問、すばる審査評価機構 非常勤監査役の他、執筆、講演、広報ブランディングアドバイザリー等に従事。日本労務学会員。男女の双子を含む4児の父で兼業主夫。


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