「住宅ローン詐欺」筆者も勧誘された“驚きの手口” 不動産・金融業界が取るべき対応とは:古田拓也「今さら聞けないお金とビジネス」(2/2 ページ)
住むつもりのない物件の住宅ローンを「居住目的」として個人に虚偽申請させ、実際には投資用物件として運用させる──。そのような不正が発覚し、都内の不動産会社の役員ら3人が逮捕された。再発防止のために、不動産業界や金融業界はどのような対応を取るべきなのか。また、筆者自身も勧誘を受けたことがある、詐欺の実際の手口とは。
金融機関の審査体制に潜む課題
金融機関は融資の際、申請内容の真偽を確かめる審査を行う。しかし、今回の事件では虚偽申請が容易に通過していた。
原因として、不動産会社や代理店が申請書類の準備を代行し、虚偽の住民票や収入証明書を用意していたことが挙げられる。これらの書類が審査をすり抜けた背景には、金融機関が審査業務を外部に委託していたことや、審査基準の形骸化があったとみられる。
また、低金利政策のもとで、住宅ローンは金融機関にとって重要な収益源である。競争力を保つために審査の迅速化を優先した結果、不正申請を十分に精査できていなかった可能性も否定できない。
住宅ローンと投資用ローンの区分は法的に明確だが、実際の運用には盲点がある。現行の法律では、筆者の事例のように、転勤や介護などを理由とした居住地変更という特殊ケースについて、その真偽を確実に確かめることは難しい。
従って、当局側も、虚偽申請を助長した不動産会社や仲介業者に対する厳しい罰則を導入することで抑止による犯罪防止効果を期待していると考えられる。
不正行為の影響と再発防止策
今回の事件は、不動産市場や金融市場に大きな影響を与える可能性がある。不正行為が発覚したことで、住宅ローン全体への信頼が揺らぎ、真面目にローンを利用しようとする一般消費者にも影響が及ぶ懸念がある。特に、金融機関が審査基準を厳しくすることで、正当な住宅購入希望者がローンを利用しづらくなるリスクも指摘されている。
再発防止には、不動産会社は顧客に正確な情報を提供し、リスクを十分に説明する義務を果たすことが求められる。金融機関は、申請書類の真偽を厳しくチェックするためのリソースを確保し、審査体制を強化する必要がある。また、業界全体で疑わしい不動産取引や業者に関する情報を共有し、透明性を高めることで、不正行為の監視体制を強化することも一案だろう。
この事件は、低金利政策や不動産市場の活況という経済環境が不正行為を助長する温床となっていることを示している。金融機関、不動産会社、ローン仲介業者がそれぞれの役割を果たし、法規制を強化することで、健全な市場運営を目指す必要がある。市場の信頼回復と消費者保護のために、業界全体での改革が急務である。
筆者プロフィール:古田拓也 カンバンクラウドCEO
1級FP技能士・FP技能士センター正会員。中央大学卒業後、フィンテックベンチャーにて証券会社の設立や事業会社向けサービス構築を手がけたのち、2022年4月に広告枠のマーケットプレイスを展開するカンバンクラウド株式会社を設立。CEOとしてビジネスモデル構築や財務等を手がける。Xはこちら
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