ユニクロの柳井氏は、なぜ「ウイグル綿花問題」を語ったのか 中国で炎上しても欧州を選んだ理由:スピン経済の歩き方(6/8 ページ)
英国BBCが報じたファーストリテイリング柳井正会長兼社長のインタビューが話題になっている。なぜこのタイミングで、これまで沈黙を貫いてきた「新疆ウイグル問題」に触れたのか。その狙いは?
成長の足かせになる大きなリスク
しかし、この中長期ビジョンには大きなリスクが一つある。ここまでいえばもうお分かりだろう。そう、「新疆ウイグル自治区の綿花」である。
先ほど紹介したように、この人権問題は西側諸国のメディアが火付け役であり、西側諸国の消費者も人権問題への関心が非常に高い。欧州で確固たる地位を築くには、これまでのような「ノーコメント」では済まされない。強制労働でつくられたファッションという疑いの目で見られたら、積み上げてきたブランドイメージは一気に地に落ちる。それどころか商売自体ができなくなる恐れもある。
欧州連合(EU)の欧州議会とEU理事会は2024年3月、強制労働によって生産された製品の流通や輸入を禁止する規制案を3年後からスタートすることで暫定合意している。EU圏内の企業は、人権問題に対処するように義務付けられるのだ。もちろん、これは「新疆ウイグル自治区の綿花」を念頭においたものであることはいうまでもない。
だから、柳井会長はこれまでは決して明言しなかった「新疆ウイグル自治区の綿花」に触れた。しかも、相手はお膝元である日本のメディアではなく、英国国営放送のBBCというのも分かりやすい。
BBCはウイグル問題を積極的に扱っていて、2021年にはウイグル族の女性たちが新疆ウイグル自治区の「再教育」施設で、組織的にレイプや性的虐待、拷問の被害に遭っていたと述べたインタビューを報じた。中国外務省は、BBCによる「虚偽の報道」だと非難した。
つまり、欧州市場に対して「ユニクロは中国の人権侵害に加担していないですよ」とアナウンスするには、これ以上の適任はないのである。
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