日産9000人削減の衝撃 「技術自慢の会社」ほど戦略で大コケする理由:スピン経済の歩き方(1/8 ページ)
日産自動車は、なぜここまで経営危機に陥ってしまったのか。特に中国市場が厳しい理由や、問題の本質とは――。
「やっちゃえ日産の集大成がこのリストラだったのか」
「やっちゃえじゃなくて、やっちまったな、日産」
そんな風にネットやSNS上で企業スローガンをイジり倒されているのは、2024年9月中間決算で営業利益90%減とかなり大幅な減益となったことで、全世界で9000人のリストラを発表した日産自動車である。
2019年にカルロス・ゴーン氏を追放した後に、経営危機で1万2500人をリストラしたことも記憶に新しい。そのためか「『またか』って感じで驚きはない」「定期的に経営危機に陥る会社ってイメージ」などの厳しい声も上がっている。
自動運転化技術やプロパイロット(高速道路走行時の運転サポート)などの強みを持つ「技術の日産」が、なぜこんな体たらくなのかと首をかしげる人も多いだろう。技術力を生かすことができない経営陣に苛立ちを覚えている人もいらっしゃるだろう。
お気持ちは非常によく分かる。ただ、企業の危機管理に携わってきた立場から言わせていただくと、そのように何かとつけて先端技術だ、独自技術だ、と「技術自慢」にのめりこむ会社のスタンスこそが、今回の大コケにつながったと思っている。
実はこの問題については今から5年半前、2019年の経営危機時にも指摘させていただいた。
『なぜ日産は「技術」をアピールして、「ぶっ壊せ」と言えないのか』という記事の中で、本来は顧客を満足させるための「手段」に過ぎない自社技術について、やれ世界一だ、最先端だと自画自賛を始めたときは「衰退」が始まっている、ということを東芝などを例に解説した。そして、そのような「技術自慢企業」が陥りやすい「失敗パターン」をこう指摘した。
『製品やサービスというアウトプットよりも、「技術」というインプットを重視しているため、顧客の嗜好(しこう)や社会の変化についていけない』(ITmedia ビジネスオンライン 2019年5月21日)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 船井電機「給料払えません。即時解雇です」 社員が気づけなかった「3つ」の危険信号
ある日突然、会社が倒産――。船井電機の社員に突然起きた「悲劇」から、多くのビジネスパーソンが学ぶべきこととは。 - 衰退するシャープは「日本そのもの」か “世界の亀山モデル”が失敗パターンにハマった理由
シャープが、テレビ向け大型液晶パネルの生産を2024年9月末で終了すると発表した。同社はまるで「世界の変化に対応できず」衰退していく「日本そのもの」のようだ。なぜかというと……。 - なぜ「サマンサタバサ」はここまで追い詰められたのか 「4°C」との共通点
「サマンサタバサ」が崖っぷちに追い込まれている。ボーナスの支給がないほど業績が低迷しているわけだが、なぜここまで追い込まれているのか。「4°C」との共通点があって……。 - サイゼリヤの進化か、改悪か? メニュー削減と2000店舗拡大の裏にある戦略
「脱ファミレス戦略」を進めるサイゼリヤが、メニュー数を減らしている。中期目標で「国内2000店舗」を掲げているが、それは本当にサイゼリヤファンが求めていることなのだろうか。