野村不動産の「トライアルオフィス」に潜入 本社移転前に“実験”を挟んだワケは?:オフィス探訪(3/4 ページ)
野村不動産は2022年10月、従業員が働きやすいレイアウトを実現するべく、建て替え予定の浜松町ビルディングに「トライアルオフィス」を設置。そのコンセプトや機能面、2年間運用する中で見えてきた課題や成果を聞いた。
「従業員の声」を反映 より実用的な空間を創出
こちらの区画は、C・D区画の運用成果や課題を踏まえ、より従業員が働きやすい機能・レイアウトに変えている。そのため「トライアルオフィス」はフリーアドレス制を採用しており、基本的にどこで仕事をしてもいいのだが、従業員の数はA・B区画の方が断然多かった。
エントランスの近くにはコンシェルジュが常駐し、効果的なオフィスの活用方法や備品の貸し出しなどを行っている。
入室後すぐに、フロア全体に絨毯(じゅうたん)が敷かれていることに気付いた。これは、C・D区画では床を歩く際にハイヒールの「コツコツ」という音が気になる、という従業員の指摘を受けて改善したものだ。確かに、足音などは実際にその場で働いてみなければ分からないことであり、移転後に気付いて改装することは難しい点の一つだろう。
A・B区画も基本的に、C・Dと変わらずフォーカスエリア、ミーティングエリア、オープンエリアの3つの機能を引き継いでいるが、細部は異なる。前述した床の変更もそうだが、会議室の数も従業員のニーズを反映し増やした。
C・D区画にあった台形や半円のデスクはなかったが、フォーカスエリアに三角形のデスクがあった。確かに、三角形であれば複数人で利用しても、スペースの区切りが分かりやすく、丸形テーブルで感じた課題も解決できそうだ。
また、カフェスペースを広めにとっており、従業員同士で雑談などちょっとした休憩で利用できるようにしている。
A・B区画を回って感じたことは、ポジティブな意味で「派手さはない」ということ。奇抜な家具や変わった機能を持つ什器は影を潜め、従業員の働きやすさを尊重したところ、今のカタチになったのだろう。
レイアウトをみても、C・D空間はあえて、あまり区切らず機能が分散している印象だったが、A・B空間は従来型のオフィスに近く、割と区切られていると感じた。
「従来型オフィスのように、ある程度は機能ごとに区画があった方が従業員は働きやすいようです」(春日氏)
オフィス戦略室を設置
「トライアルオフィス」の開設に先立ち、野村不動産は2022年4月にオフィス戦略室を設置。元々経営企画部の1つの課として発足されたが、人事部、コーポレート部、総務部など、さまざまな部からメンバーが招集された。オフィス戦略室が中心となり「トライアルオフィス」は運営され、並行して新本社のレイアウトや運用/オペレーションの方法も検討している。
「トライアルオフィス」では、全社各部署とグループ会社の従業員が実際に利用している。部署ごとに、1順目は2022年10月〜2024年3月、2巡目は2024年6月〜2025年3月と計2回にわたり実際に体験する。
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