野村不動産の「トライアルオフィス」に潜入 本社移転前に“実験”を挟んだワケは?:オフィス探訪(2/4 ページ)
野村不動産は2022年10月、従業員が働きやすいレイアウトを実現するべく、建て替え予定の浜松町ビルディングに「トライアルオフィス」を設置。そのコンセプトや機能面、2年間運用する中で見えてきた課題や成果を聞いた。
デザイン性を高めたオフィス空間
まずはC・D区画からみていこう。エントランスを抜けると、室内は、フォーカスエリア(集中席)、オープンエリア、ミーティングエリアの3エリアが広がる。フォーカスエリアでは、集中デスク、集中ブース、電話ブースが設置され、ミーティングエリアでは、3〜4人、6人、8人、10人用と人数ごとに各サイズの会議室を用意した。
オープンエリアには、特徴的な機能が多くある。例えば、フレキシブルエリア(LABO)だ。台形のデスクを複数設置してあり、2台つなげると6角形の大型テーブルになる。移動式のパーテーションは、空間を自由に区切ることができ、ホワイトボードも兼務。ただ、このホワイトボードはあまり使われていないという。もしかすると、立ってホワイトボードに何かを書きながら、他の社員と議論するというのは日本人にはあまり、なじみがないのかもしれない。
従業員の反応を見て、A・B区画にあるフレキシブルエリアでは台形のデスクとホワイトボート兼パーテーションの什器を取り入れるのをやめた。こうした従業員の声をリアルに生かせるのは「トライアルオフィス」を作った大きなメリットだろう。
フレキシブルエリアはもう1カ所あり、そこはCAMPと呼ばれるエリアだ。こちらは半円テーブルを用意し、つなげると丸型になる。3つのカーテンに仕切られ、一つ一つを独立して活用することも可能だ。ただ、こちらも「あまり活用されなかった」と、コーポレートコミュニケーション部広報一課 課長代理の堀陽子氏は話す。
「丸形テーブルだと、席に着くとどこまでが自分のスペースなのか区切りが分かりづらく、そのせいか、複数人で使用している姿はあまり見かけられませんでした」(堀氏)
この丸型テーブルもA・B区画ではあまり採用されなかった。
オープンエリアでは、他に細長いテーブルを設置し、チームで会話できる「チームラウンジ」、ハイテーブルとスツールで気軽に議論ができる「チームタッチダウン」、カジュアルな打ち合わせができる「ファミレスブース」があり、一通りのラウンジ機能を備えている。
「GREAT ROOM」という多目的スペースもある。プロジェクトを使った大会議やイベントができるスペースだ。健康に関する社内イベントを行ったり、部を横断した懇親会なども実施したりしたという。
C・D区画を一通り歩いて感じたのが、特徴的なオフィス家具が多いことだ。デザイン性の高いインテリア家具のような什器が備え付けられている。ただ、これも座り心地に関して、従業員から声があり、「デザイン性の高いチェアはオシャレで見ていて楽しいのですが、仕事で長時間座ることを考えると当社のオフィス向きではないことが分かりました。そこで、A・B区画のものはデザイン性を抑え、実用性に特化したものをそろえています」と堀氏。
続いて、A・B区画を見ていこう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
入口で顔認証 備品が切れるとSlackで通知……あるIT企業のスマートオフィスがすごかった【動画あり】
IT企業・アステリアが本社オフィスのキーポイントとしているのが、数十台ものカメラAIやIoTセンサーだ。オフィスの居心地やいかに? 現地で取材した。
ライオン、約50年ぶりのオフィス移転! 従業員同士の交流を促進する仕掛けとは?
“オフィスの芝生”で仕事? パナソニックが「出社したい」を追求した新拠点
パナソニックは、家電事業に関わる部門・関連会社が集結した「パナソニック目黒ビル」(東京都目黒区)を10月にオープンした。テレワークで顕在化したコミュニケーション不足の解決とパナソニックらしさを意識した職場環境を目指したという。若手社員が中心となって取り組んだというパナの新オフィスを取材した。
大規模オフィスを10分の1に縮小したLIXIL 「1周400メートル」に込めた思いとは
東京・品川の住友不動産大崎ガーデンタワーに本社を移転したLIXIL。大規模だった旧オフィスから一転、新拠点では敷地面積を約10分の1に縮小し、オフィスを「コラボレーションを促進する空間」と再定義した。オフィスの移転理由から新オフィスに込めた思いまで、総務部部長の林崇志氏に話を聞いた。
応接室は「プレモル」に「伊右衛門」 オフィスは“商店街”と話すサントリーの狙い
サントリーグループが2021年2月に移転した田町オフィス(東京都港区・芝浦)では、テレワークが普及した今だからこそ、“リアル”の場を大切にしている。同グループのDNAである「やってみなはれ」精神が浸透するオフィスとは――オフィスを訪ねた。




