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野村不動産の「トライアルオフィス」に潜入 本社移転前に“実験”を挟んだワケは?オフィス探訪(1/4 ページ)

野村不動産は2022年10月、従業員が働きやすいレイアウトを実現するべく、建て替え予定の浜松町ビルディングに「トライアルオフィス」を設置。そのコンセプトや機能面、2年間運用する中で見えてきた課題や成果を聞いた。

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連載:オフィス探訪

 長引くコロナ禍の影響は、人々の生活様式を変貌させた。それはビジネスパーソンの働き方もしかり。「働く場所=会社のオフィス」が当たり前だった世界は消え、テレワークが浸透した現代では、オフィスだけでなく自宅、コワーキングスペース、シェアオフィス、カフェに至るまで“働く場”は多様化している。

 この連載では、“働く場”の再定義が余儀なくされた現代において会社がどう対応するべきか。先進的な取り組みを行う企業を紹介していく。 過去記事はこちら

 野村不動産が東京湾岸部で開発を進める「BLUE FRONT SHIBAURA(芝浦プロジェクト)」。オフィスや商業施設などからなるS棟・N棟の2つの高層複合ビルを建設する大型事業で、同グループ各社の本社も2025年中にS棟への移転を計画している。

 同社は本社移転に際し、2022年10月、従業員が働きやすいレイアウトを実現するべく、建て替え予定の浜松町ビルディングに「トライアルオフィス」を設置した。今回は、野村不動産グループオフィス戦略室長の春日倫氏に、トライアルオフィスのコンセプトや機能面、2年間運用する中で見えてきた課題や成果を聞いた。


野村不動産グループオフィス戦略室長の春日倫氏。トライアルオフィス設置から見えてきたものとは?

オフィスの縦割り構造に課題を感じていた

 開放感のあるオフィスフロアが広がり、窓からは東京湾が一望できる――。ここは、高層ビルの33階に設置された、野村不動産のトライアルオフィス。エントランスに入ると、大型のデジタルサイネージが出迎える。従業員一人一人がスマホに専用アプリをダウンロードしており、全員の位置情報がサイネージに映し出されるようになっている。加えて、会議室や室内の混雑状況も一目で分かる。


C・D区画エントランスの様子。最初に大型のデジタルサイネージが出迎える

 「数年前からオフィスの縦割り構造に課題を抱えていた」と春日氏は話す。

 同社は1978年に新宿野村ビルへ本社を構え、40年あまりが経過。その間、事業規模の拡大、グループ社員数も増加し続け、最終的には20フロアに部署・グループ会社が分散してしまっていた。

 「新宿野村ビルのオフィスでは、執務席は固定で部署も島型のレイアウトでした。加えて20フロアに分散しているので、部署間での交わりはほぼないという課題がありました。オフィスの拡張余地も限界に達していたこともあり、2019年頃から移転先を探していたんです」(春日氏)

 コロナ禍に見舞われ、一時は全社員がリモートワークを余儀なくされが、コロナの収束とともにハイブリッドワークが普及。同社でも本社移転の計画が本格的に始動した。

 移転先では、部署やグループの垣根を越えられるようなコミュニケーションが生まれるオフィスにしたかったというが、春日氏は「現在のたこつぼ化しているオフィスから一気に働き方を変えるのは難しいのでは」と感じたという。「そこで、新本社に変わる前にワンステップ挟もうと思ったんです」(春日氏)

 こうして2022年10月、トライアルオフィスを設立。まず、C・D区画を整備し、2023年5月に同じフロアの向かい側にA・B区画を設置した。両区画はそれぞれ400坪、400〜500人が収容できる規模となっている。さっそくトライアルオフィスの中を詳しく見てみよう。

BLUE FRONT SHIBAURA(芝浦プロジェクト)

 野村不動産とJR東日本が推進する国家戦略特別区域計画の特定事業。東京湾岸部に位置する浜松町ビルディングの建て替え事業として、ツインタワーを建設する。区域面積約4.7ヘクタール、高さ約230メートル、延床面積約55万平方メートルに及び、高層ビル内にはオフィス・ホテル・商業施設・住宅を構える予定だ。

 建設中のS棟は2025年2月末に竣工予定。現・浜松町ビルディングはN棟として2025年秋以降に立替工事を実施し、2030年度の竣工を目指している。

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