日本発スポーツビジネスの“業界標準”を作れるか ダンスのプロリーグ「D.LEAGUE」の挑戦:幹部が自信のワケ(2/2 ページ)
Dリーグを運営するDリーグ社の神田勘太朗COOは「ダンスのビジネス市場は伸びる一方」と、今後の運営に自信を見せる。創設5年目にして、すでに黒字化も視野に入り「将来的には米国、中国、欧州への展開も視野に入れている」と強気だ。Dリーグの展望を聞いた。
NFT、メタバース、アバター 2030年を目指す
デジタルネイティブでもある若いファンに、人気を博しているのがDリーグのNFTだ。選手と一緒に写真撮影ができるほか、香水のNFT(選手が選んだ香水を購入できる)と入場チケットのセット販売が好評だという。
「この事業を担当しているソフトバンクさまもNFTの成功事例をたくさん作りたいのだと思います。日本ではWeb3.0がこれから来るといわれていて、1度落ちこんだ時期もありましたが、2030年ごろに復活するでしょう。その時にはすでにDリーグに磁場ができていることを見越していると思います」
現時点では、多くの企業がNFTを収益化できずに途中で断念している。だが、そんな中でもDリーグは粘り強く事業を続ける方針だ。
「今後、メタバースやアバターが当たり前になるときのために、今のうちから少しずつ準備をしています。現時点では、多くの企業がこのことを理解していないように見受けられます。将来的には、ブロックチェーンというものを意識しないでも、多くの人が“いつの間にか”使っている状態を作りたいと考えています」
神田COOは、ギャランティーなども含め、全てをトークンでやりとりする世界までもが想定しているという。将来的に海外でもDリーグを始めた際、トークンの交換によって取引ができる未来まで考えている。仮想通貨がさらに普及する未来を考えたときに、Dリーグとして、対応できる状態を描いているのだ。
ロス五輪でブレイキンが正式種目から外れ Dリーグにはプラス
以前、Dリーグの平野岳史CEOにしたインタビューでは「Dリーガーがアルバイトをしなくても食べていける報酬を得ている」と語っていた。現在も年収で1000万〜1500万円を稼ぐ選手も出てきているという。神田COOはDリーグが選手に寄与する意義を語る。
「Dリーグができる前は、(ダンサーにとっては)ダンスを教えるレッスン料が主な収入源でした。時にはイベントのゲストとして呼ばれることがあったかもしれませんが、あくまでも基本の収入はレッスン料だったのです。でもプロのサッカー選手は、サッカーを教えることがメインの収入にはなり得ませんよね。同じくDリーガーにとっても、将来的にはDリーグからの収入がメインとなり、レッスン料はいわば副収入に変わっていくことでしょう」
もともとDリーグの黒字化には、創設から7年ほどを擁すると想定してきた。だが5年目に入り、すでに黒字化も視野に入ってきたという。AmiなどのオリンピアンがDリーグに参戦する意義も大きい。五輪でダンスを初めて見たという観戦者も少なくなく、継続してダンスを観戦したいとき、Dリーグが受け皿になる。
2028年ロサンゼルスオリンピックでブレイキンが正式種目から外れてしまったことはDリーグにとってはマイナスにも見えるが、神田COOは「プラスだ」と話す。「正式種目のままならAmiやShigekixは今、Dリーグに参戦するよりも、4年後を目指して練習をしているでしょう」といい、Dリーグへ参戦することはなかったと考えている。正式種目としての復活は早くても2032年になりそうだ。その時点でも彼らはまだ五輪に出場できる年齢でもある。そしてそのころにはDリーグ自体も、プロリーグとしての完成度を高めているはずだ。
日本発スポーツビジネスの“デファクトスタンダード”になれるか
神田COOによると、将来は米国、中国、欧州への展開も視野に入れているという。サッカーやラグビーは英国、バスケットボールや野球は米国が「業界標準」を作ってきた。もしDリーグのフォーマットを世界に広められれば、スポーツビジネスにおいて日本発の業界標準を作ることになる。
客は会場に足を運ぶと、自分と同じダンス好きがこれだけいるのかと驚く。審査員としても参加でき、推し活もでき、自分もかっこよくいられ、承認欲求も満たしてくれる。筆者から見ても観客は楽しそうで、スポーツとしてもビジネスとしても、うまくいっているように見えた。
神田COOは「Dリーグが発足し、NFTビジネスも順調で、パリ五輪までありました。若いファンがこの流れに乗らないわけがないんです。この先スポーツとしても、ビジネスとしても絶対に伸びます」と言い切る。筆者も学校でダンスが必修化されている限り、その可能性が高いように感じた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
EXILE HIROが後押し プロダンスリーグ「D.LEAGUE」トップが描く展望と戦略
2021年1月に日本発のプロダンスリーグ「D.LEAGUE(Dリーグ)」が誕生した。若者の取り込みに成功し、かつ女性の取り込みにも成功したDリーグの戦略は、若者との接点に悩む企業にも参考になるはずだ。いかにしてダンスという新しいムーブメントを作ろうとしているのかを追った。
プロダンスリーグ「D.LEAGUE」を生み出したフルキャスト創業者 忘れられない“3つの決断”
2021年1月に日本発のプロダンスリーグ「D.LEAGUE(Dリーグ)」が誕生した。若者の取り込みに成功し、かつ女性の取り込みにも成功したDリーグの戦略は、若者との接点に悩む企業にも参考になるはずだ。
音楽ポップスの興行規模ランキング 3位「AAA」、2位「EXILE TRIBE」、1位は?
ぴあ総研は、2021年の音楽ポップスの興行規模に関するランキングを公表した。その結果1位は、デビュー10周年を迎えてドームツアーを開催した「三代目J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE」だった。
若手ジャニーズ事務所タレント 3位は「岸優太」、2位は「中島健人」、1位は?
1位は「平野紫耀」さん(King & Prince)、2位は「中島健人」さん(Sexy Zone)、3位は「岸優太」さん(King & Prince)。
音楽ポップス興行規模ランキング 3位「King&Prince」、2位「Kis-My-Ft2」、1位は?
2022年上半期の「音楽ポップス興行規模ランキング」。1位はMr.Childrenの65.7万人、2位はKis-My-Ft2の52.8万人、3位はKing&Princeの50.6万人となった。
イケメン俳優ランキング、2位は「吉沢亮」 1位は?
調査対象者は10〜50代以上の男女、有効回答数は300人。



