鳥貴族が新時代の「居酒屋王」に!? 苦戦するライバルと差がついた決定的な理由:小売・流通アナリストの視点(3/4 ページ)
コロナによるダメージから回復しきっていない居酒屋各社。その一方で、新しい王者として台頭してきたのが「鳥貴族」だ。苦戦するライバルとの違いはどこにあるのだろうか。
居酒屋王にふさわしいブレない方針
鳥貴族は2020年の決算説明会の時点において、コロナ対策のみならず、「中長期的な構想と取組」を発表。(1)マーケティング、商品開発の強化、(2)不採算店舗を整理しつつ、新しい国内未出店地域への拡大、(3)新業態開発(後の「TORIKI BURGER」など)、(4)海外進出、を明記してアフターコロナにおける展開についても成長戦略を示した。TORIKI BURGERのようにうまくいっていない事業もあるが、鳥貴族はおおむね、今もこの計画に沿って国内エリアを拡大しながら、海外への進出を本格化しつつある。
2020年において、外食事業者でここまでブレない計画を公表できている企業は、他にほとんどなかったであろう。多くの外食企業のIRにおける開示内容が乏しくなり、説明が不十分となる中、ここまで腹の据わった方針発表ができた鳥貴族は、正に「“居酒屋王”になる!」にふさわしい度量があったといえる。
鳥貴族は2024年7月期決算発表において、2027年7月期に向けた新たな中期経営計画を発表。国内出店エリアの拡大と海外進出強化によって、売上高600億円、営業利益60億円(利益率10%)を達成すると打ち出した。
これまでの経営を踏まえれば、こうした計画についても高い確率で達成するだろうが、それ以上に、鳥貴族の今後の成長には、歴史あるFCのやきとり大吉が大きく寄与するのではないかと考えている。
鳥貴族は、店長職以上の従業員は「鳥貴族」の加盟店オーナーとして独立が可能な独立支援制度を設置。独立に当たっての資金調達や、経営指導などのバックアップを制度として整備している。こうした独立支援制度と高齢化した大吉オーナーたちの事業承継が相まって、その実効性を高め、モチベーションのさらなる向上につながるからだ。
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