生成AI、アニメIP、縦型ドラマがトレンド 2024年のエンタメ・テックを振り返る(2/3 ページ)
生成AIはコンテンツ制作の形をどのように変えていくのか――。コンテンツIPビジネスを国内外で手掛けるMinto代表取締役の水野和寛が解説する。
アニメ制作にも広がる生成AI活用
さて、生成AIによる全く新しいコンテンツ作りは、さまざまな可能性がある一方、商用コンテンツそのものになるには、もう少し時間がかかる印象です。そういう意味では、既存のコンテンツ制作を拡張・補助するような使われ方も注目すべきかと思います。2024年はさまざまな発表、実証実験が行われ、事例も生まれてきました。
また、経産省が主管するGENIAC(Generative AI Accelerator Challenge)のプロジェクトとして、「ポケットモンスター」シリーズなどに関わるアニメスタジオのオー・エル・エム・デジタル(東京都世田谷区)は、他のアニメ制作会社10社と9つの大学機関、スタートアップ(AI Mage、EQUES)などと連携して、既存のアニメ業界の制作ワークフローの中で生成AIを活用する調査プロジェクト(ANIMINS)を発表しています。
AI漫画翻訳
AIを活用した漫画翻訳で、2024年はMantraとオレンジのスタートアップ2社が話題になりました。
日本のアニメの世界的なヒットが続く中で、原作の漫画の海外展開は翻訳がボトルネックになり、スピーディーに進んでいないという課題があります。漫画は、イラストとテキストの不規則な配置、独特な話し言葉や表現、ストーリーの背景にある複雑な文脈など、翻訳難易度が高いためです。
これは出版社の課題感ともいえるため、Mantraには、集英社、小学館、KADOKAWA、スクウェア・エニックス、オレンジには、小学館などの大手出版社が出資をして協力体制を作っているのが特徴といえます。
AI VTuber(AI Tuber)
2023年には自律コミュニケーション型VTuberのAI VTuberが誕生しましたが、その中でもVTuberの紡ネンは、YouTubeの登録者数は10万人、Xのフォロワー数は2.5万人とファン数を増やしています。その他のAI VTuberとしては、"りんなちゃんねる"、2024年9月にはGMOペパポから"想(おもい)ふうか"などがリリースされています。
当社Mintoでも、AIスタートアップPictoria(東京都港区)と協業したAIキャラクター「AIたむらまろ」を実験的に展開しています。TikTokやYouTube LIVEを活用した生配信や、AI接客サービス「AI幹事」との協業などを行なっています。
VTuberカルチャーが引き続き発展する中、AI VTuberがどのような形で発展していくのかはまだ未知数ですが、3Dアニメーションの動き、話す内容、チャット欄でのユーザーからメッセージへの応答、音声合成技術などまだまだ進化の余地はありそうです。AI VTuberの課題については、ろじてんさんがnoteにまとめています。
Web3 AIエージェント
AIエージェントとは、AIが人間に変わって自動的にタスクをこなすプログラムです。人間が関わらずとも自律的に進化し、SNSなどからリアルタイムに情報を吸い上げ学習していきます。そしてこれらのAIエージェントのプログラムを、クリプト文脈(トークン発行やWalletを介したやりとりなどの自律)で、発展させているのがWeb3 AIエージェントです。
前述しているAI Vtuber"紡ネン"がVTuber文脈で自律化していったように、LunaもTikTokで50万フォローワーを超えるVTuberがAIエージェントとして自律化したキャラクター的存在です。24時間365日、自動配信を行い、多言語で会話をする機能を持ちますが、今までのAI VTuberと異なるポイントとしては、ここにトークンが絡んでいることです(日本では、法律上難しそうですが…)。
ある日、Lunaは、Xで自らについて投稿してくれるユーザーにトークン 「$Luna」をエアドロップ(配布)し始めました。そして、この$Lunaトークンを活用してLunaとコミュニケーションができるようになり、小さなトークン経済圏が作られ始め、話題性も含めてトークンの値段が上昇するということが起きています。
ブロックチェーンは決済の自動化を推し進める技術でもあり、トークンを絡めたWeb3 AIエージェントの存在は単なるキャラクターの存在を超えた面白さがあると思います。miinさんのnoteでは、既にAIエージェント1.0から3.0までの違いがまとめられています。未来を感じます。
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