生成AI、アニメIP、縦型ドラマがトレンド 2024年のエンタメ・テックを振り返る(3/3 ページ)
生成AIはコンテンツ制作の形をどのように変えていくのか――。コンテンツIPビジネスを国内外で手掛けるMinto代表取締役の水野和寛が解説する。
漫画からドラマへ 縦型コンテンツの波
さて、新しいコンテンツ・トレンドへと話を少しシフトします。2022年頃からスマホに最適化した縦型漫画のWebtoonコンテンツは増え、市場は広がりました。今年の象徴的な事例としては、Webtoon原作で最もヒットした作品「俺だけレベルアップな件」が、2024年1月からテレビ&配信アニメシリーズとしてスタートし、世界的にヒットしたことが挙げられます(派生したゲーム売り上げは1.4億ドル(210億円)超といわれ、アニメ2期制作も決定)。
また、2024年6月には「LINEマンガ」などを展開するWebtoon Entertainmentが米ナスダック証券取引所に上場し、時価総額は30億ドル弱(4500億円)の規模でのスタートとなりました。
一方で、その後Webtoon Entertainmentが、3カ月で株価は半値になるなどの影響もあり、Webtoon市場およびコンテンツが一時的なトレンドで終わってしまうのではないか? と危惧する声も出てきています。
個人的には、Webtoonコンテンツへの危惧は、ガートナー ハイプ・サイクルの「幻滅期」に近いかなと感じています。本来、漫画の歴史に対してWebtoonの歴史はそこまで長くないものの、この数年間は漫画を超える存在として期待値が先行していました。ここからはWebtoonならではのコンテンツの特性をしっかりと捉えたコンテンツが新たに生まれ、生き残っていくのではないかと感じます。
縦型コンテンツで、次に生まれて来ているトレンドは、縦型ショートドラマです。元々TikTokなど多くの動画プラットフォームで縦型動画や縦型ドラマ自体は無料配信されていましたが、2023年頃から、有料課金型のショートドラマアプリが中国、米国、日本などで人気になりました。5年後に9兆円市場ともいわれ、国内外の多くの企業が参入しています。当社MintoもNTTスタジオ&ライブ、FANY(吉本興業グループ)と協業で「FANY :D」をリリースしました。
同じ縦型/単話型のコンテンツとして、Webtoon原作のショートドラマ化の話は多く聞きます。ショートドラマプラットフォーム「BUMP」でヒットしたドラマ「シンデレラ・コンプレックス」はSORAJIMA社が制作したWebtoonが原作になっていて、縦型/短話課金型コンテンツの新しいメディアミックスだと感じます。
2025年には、国内外合わせて30以上のショートドラマアプリが存在する状態になるのでは? と予想されており、アニメやCGアニメなど非実写系ショート映像コンテンツも出てくることが予想されます。
AIによる技術革新と縦型ショートコンテンツの化学反応
2024年も引き続きAI技術により、新たなコンテンツの可能性が拡がったと思います。その中でも動画生成AIのSoraは大きなインパクトでした。また、後半で述べたショートドラマ&アニメコンテンツのトレンドとは別軸のようですが、映像コンテンツの発展という観点ではAIとショートドラマと大きく関わってきます。AIによる映像制作のコストダウンなのか、全く新しい映像コンテンツの作り方なのか、そこでのストーリーやキャラクター性をどう担保して、作品にしていくのか? などなど。
いずれにしても、新たな技術とカルチャーによって、2025年のエンタメも益々面白いものになっていきそうです。それでは、また次回!
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