昭和的「日本企業」は人事改革で解体される? 若手社員への配慮と、シニアの活性化が注目される背景(2/4 ページ)
人手不足の深刻化を前に、各社で人事制度の改革が進む。特に顕著なのが、シニアをターゲットとした継続就労の支援と、若年層のキャリア自律を促す取り組みだ。これらの取り組みは、いわゆる「日本企業」の解体につながるかもしれない。
レガシー業界も少しずつ変化
さらに驚くのは、人事制度においても人一倍「お堅い」印象が強かった金融業界でも、同じような動きが出ていることです。
銀行ではこれまで、50歳を超えると関連会社や取引先への転籍出向が既定路線とされ、年収が大幅に減るのが当たり前でした。一方、三井住友銀行では2025年度中をめどに新人事制度をスタートさせる予定で、そこでは現状51歳で給与減となる制度を撤廃して50代以降も実績に応じて給与が増える仕組みに改め、60代でも支店長に就けるなど、シニア層の処遇を大幅に見直すとしています。
保険や証券業界も同様です。明治安田生命では、シニア層にも役割に見合った給与を支払う制度に改め、かつ内勤職の定年も65歳から70歳に引き上げる方向で労働組合との協議に入っているといいます。証券業界でも岡三証券が、現在は65歳となっている雇用上限年齢を撤廃し、70歳でも支店長職を務めることが可能な人事制度を2025年度から始めると発表しています。金融業界は「横並び意識」が強く、シニア待遇改革を盛り込んだ人事制度改定は、今後大きく広がりをみせるのではないかと思われます。
このように、業種を問わずシニア層に対する「優遇措置」ともいえそうな人事制度の改訂が相次いでいるのは、企業の人手不足感、特に若年層に対する不足感の高まりが大きな要因であるのは間違いありません。この先も少子化による若年人口の減少はいかんともしがたく、シニア層の活性化により若年層の人手不足を解消する意図が見てとれます。「人生100年時代」を迎え、国が2021年の改正高年齢者雇用安定法により、70歳までの就業機会確保を「努力義務」としたことも、これを後押ししているといえます。
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