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営業パーソンの「口グセ」をAIで可視化 インサイドセールスにおける音声データ活用法「音声×AI」が変えるビジネスの未来(1/2 ページ)

今回は、音声×AIを活用したデータ分析が営業活動にどのような影響を与えるのかを、インサイドセールス(電話・メール・チャットなどを活用した内勤営業)を例に紹介。「話し方」「話す内容」「行動」の最適化を具体的に掘り下げていく。

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連載:「音声×AI」が変えるビジネスの未来

ビジネスシーンでAI活用が広がっている。AIに学習させられるデータは、テキストや画像だけではない。実は有効活用できるにもかかわらず、多くの企業が気付いていない宝の山、それが「音声データ」だ。「音声×AI」を軸としたサービスを展開するRevComm(東京都渋谷区)の會田武史・代表取締役が、音声データが有する潜在的な価値と、AI技術で最大限に活用する方法を解説する。

 前回の連載記事は、「『音声データ』は営業をどう変える? インサイドセールスと親和性が高いワケ」と題し、

  • 営業電話など口頭のやりとりが記録に残らず「ブラックボックス化」している
  • 音声データを活用することで、営業活動に変革がもたらされる
  • インサイドセールス部門が音声AI活用を促進する重要な拠点になる

――といったことを紹介しました。

 今回は、音声×AIを活用したデータ分析が営業活動にどのような影響を与えるのかを、インサイドセールス(電話・メール・チャットなどを活用した内勤営業)を例に紹介。「話し方」「話す内容」「行動」の最適化を具体的に掘り下げていきます。

著者プロフィール:會田 武史(あいだ・たけし)

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株式会社RevComm代表取締役

三菱商事株式会社にて自動車のトレーディング、クロスボーダーの投資案件・新会社設立、M&A案件等に従事。

2017年7月株式会社RevComm設立。電話解析AI「MiiTel Phone」、Web会議解析AI「MiiTel Meetings」、対面会話解析AI「MiiTel RecPod」を提供。

著書に『音声×AIがもたらすビジネス革命 VOICE ANALYSIS』(幻冬舎)がある。


話し方の“クセ”をAIで可視化 「えー、あのー」や「話し過ぎ」が改善

 顧客との会話をAIで解析すると、「話すスピード」「トーク比率」「抑揚」「相手に被せて発言した回数」「沈黙回数」「フィラー回数」「会話のラリー数」――など、話し方の特徴を定量的に可視化することができます。

 これらの数値をハイパフォーマーと比較することで「自分は早口だったのか」「話しすぎの傾向があるのか」といった気づきを営業担当者にもたらすことが可能になります。


話し方の最適化のイメージ図

 以下の表は、「話すスピード」や「トーク比率」など、各解析項目の目標値の例です。目標値は顧客の属性や取り扱う商材によって変える必要があります。それぞれの項目について詳しく解説します。


解析項目の目標値の例

話すスピード

 「早口」や「ゆっくり」といった感覚的な評価を数値化することで、相手との話すスピードの差を可視化します。

 適切なスピードは相手によって異なります。例えば、忙しい役職者に対してゆっくり話してしまうと信頼を得られないかもしれませんし、説明が複雑な商品の場合、早く話してしまうと顧客が内容を理解できず、意図しないクレームにつながってしまうかもしれません。ハイパフォーマーの話すスピードや、顧客が快適に感じるペースを基準にすることで、受注率の向上が期待できます。

抑揚

 声の音程や強弱を数値化し、「淡々としている」「ハキハキしている」といった感覚的な評価を定量的に分析します。

 抑揚がある話し方は、相手の印象に残りやすく、強調したいポイントを効果的に伝えることができます。また、感謝や喜びといった感情も自然に伝わり、商品やサービスへの想いや課題解決への熱意を顧客に届けられます。

 一方、受注につながらないケースでは、抑揚が足りずに重要な点が伝わらない、あるいは熱意が高じて早口になり内容が理解されないことが原因の場合もあります。抑揚は、話し方の改善の手がかりを見つける貴重な要素になります。

沈黙回数

 会話は「話す」「聞く」だけではなく、「間」の取り方も重要です。顧客が説明を理解したり、質問を整理したりするためには適切な間が必要です。

 対面の商談では相手の表情や仕草から適切な間を取りやすいですが、電話商談ではそれが難しくなります。ハイパフォーマーが顧客の関心を引くためにどのように間を取っているか、間の後にどんな話をしているかを分析します。適切な間を取ることで顧客は心地よく商談に応じ、話がスムーズに進みます。

 間の取り方が苦手な営業担当者は、沈黙を恐れて話を埋めたり、過剰な情報を伝えることで逆効果を招くことがあります。適切な「話す」「聞く」「間」のバランスを理解し、音声データを活用して間の取り方を改善することで、商談の質を高めることができるでしょう。

トーク比率

 顧客と営業担当者それぞれが話す時間の比率も重要なポイントです。

 一般的には、営業担当者が話す割合と聞く割合は「2:8」や「3:7」が理想とされており、「聞き上手」であることが商談成功の鍵といわれています。営業担当者の話す割合が大きいほど、顧客には押し売りのように感じられやすくなります。

 成績が伸び悩む人には、話す比率が高くなりやすい傾向があります。これは「間」を恐れる心理が影響しており、沈黙を苦手とするためについ話しすぎてしまう、あるいは顧客に断られることへの恐怖から、断りの言葉が出る隙を与えないように過剰に話してしまうといったことが原因として考えられます。

フィラー回数と被り回数

 フィラーとは、「えー」「あのー」など、次の言葉を選んでいる間の隙間を埋める言葉のことです。知識がない場合や回答に自信がない場合に増える傾向があります。

 被り回数は会話の中で被せて発言した回数のことです。新人の場合、沈黙を恐れて相手に被せて話してしまうケースがあります。この2点は業種・業界問わず減らすことが望ましい指標です。

 話し方の良し悪しには絶対的な正解はありません。そのため、自社のハイパフォーマーの数値を分析するのが最も効果的です。最も成果を上げている人の解析項目の数値を参考にすることで、自社にとっての最適解を見つけることができます。

 これらの項目は互いに連動しているため、1つずつ順番に改善していくことが効果的です。

 当社のインサイドセールスでは、入社時点ではこれらの項目を意識せずに話している人がほとんどです。しかし、電話をかける際に目標数値に近い話し方を意識的に取り組むことで、新入社員が入社後1カ月程度でフィラー回数を12回台から8回台、トーク比率を65%から58%に抑えるといった改善が見られました。

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