2015年7月27日以前の記事
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なぜ経営難に陥る「神社」が増えたのか? 神社本庁システムの“限界”に迫るスピン経済の歩き方(7/7 ページ)

神社の数が年々減っている。背景には神社本庁を本部としたフランチャイズシステムに限界があるように見えるが、どういうことかというと……。

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「変わらない」選択をした時点で、衰退が始まる

 「伝統」は大切だ。その国の人間ならば「伝統」を尊重するのも当然だ。しかし、時代の変化に合わせて捉え方を変えなければ、「伝統」は廃れるだけだ。

 例えば「着物」。テレビアニメ『サザエさん』の中で、波平さんやフネさんは自宅で和装を着ているが、今の日本であのような姿で自宅で過ごす人はほとんどいない。着物は典型的な「消えゆく伝統」の一例である。

 なぜこんなことになったのかというと、「伝統」としてやたらと崇(あが)めてしまったことでハードルを高くしたことが大きい。かつては庶民の日常着だったものが、七五三や成人式といった特別な場面でのみ着られるセレモニー着へと変わってしまった。


画像はイメージ

 需要が減ったので、着物メーカーとしては売り上げをキープするために「高級化」を進めるしかない。そうなると、庶民はどんどん着なくなる。しかも、利益を上げるために原料や縫製は中国やベトナムに依存するしかないので、養蚕業や製糸業は衰退、着物職人も減った。「伝統文化」とチヤホヤすればするほど、大衆は離れ、産業も衰退していく悪循環に陥っていたのだ。

 しかし最近になって、この負のスパイラルに変化が起きている。着物がこれまでの「伝統的なセレモニー着」から「観光地でのコスプレ」という新たな捉え方が広がったのだ。

 外国人観光客が京都や浅草を訪れる際、記念として着物をレンタルし、写真を撮るようになった。そういう店が増えれば、若い人たちも「映え」目的にデートなどで利用するようになった。こういうトレンドを受けて、アンティーク着物の価格も高騰している。

 「日本人の伝統的な正装」などハードルを上げるのではなく、「和装マナーを知らない外国人でも、着方を知らない若者でも気軽に楽しめるコスプレ」とハードルを下げたことで、衰退一直線だった着物産業が少しずつだが復活の兆しが見えてきたのだ。

 以前インタビューをした江戸時代から続く老舗企業の経営者が「伝統とは常に革新を続けていくこと」と述べていたことが非常に印象に残っている。伝統というものは「守る」ことを意識すると、どんどん保守的で排他的になってしまう。そうなると、一部の人からは熱狂的に支持されても大衆はついてこない。結果、「伝統を大事にしろ!」という叫びもむなしく、衰退に歯止めがかからない。

 残念ながら今の神社はそういう印象が否めない。日本人の神聖な場所を後世に引き継いでいくためにも、神社の世界にもイノベーションが求められるのではないか。

窪田順生氏のプロフィール:

 テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。窪田順生のYouTube『地下メンタリーチャンネル

 近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受


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