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ターゲットリスト作成が10→2日に 手作業から解放された、ダスキン法人営業本部の営業DX

ダスキンの営業部がDXによってどんどん変わっていっている。10年ほど前の「飛び込み営業」がきっかけだというが、どのように歩みを進めてきたのか。

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 主に清掃用具の定期訪問レンタルサービスなどを提供するダスキンの法人営業本部(東京都新宿区)は、2023年を境に大きく変化している。

 それまではグループ内にデータが散在し、人力の側面が強かった。散在するデータを突合しまくるエクセル職人と化す社員や、会議のための報告書作成に追われる社員もいた。なかなか営業DXに乗り出せずにいたが、2023年に10年ほど前の「飛び込み営業」が時を経てきっかけとなり、営業DXに向け走り始めた。

 具体的な取り組み、そして成果創出につながるまでの道筋や課題を馬場俊克氏(法人営業本部 本部長)と小谷八郎太氏(法人営業本部 戦略マーケティング部 戦略企画室 室長)に聞いた。


ダスキン 法人営業本部 戦略マーケティング部 戦略企画室 室長 小谷八郎太氏(左)、法人営業本部 本部長の馬場俊克氏(右)

「60年抱えていた」 データ連携の問題など、どう営業DXを進めた?

 ダスキン法人営業本部の営業DXを二人三脚で進めたのがユーソナーだ。企業データベースや戦略立案プラットフォーム名刺管理サービスなど、営業DXに欠かせないサービスを複数展開している。約10年前の飛び込み営業時は金額の観点から契約締結とはならなかったが、ユーソナーが保有する企業データをダスキンは時折購入しており、関係は続いていた。

 「2023年に馬場さんが他部署から法人営業本部に戻られた際に連絡をいただき、再検討を経てご一緒させていただくことになりました」と、馬場氏に飛び込み営業で提案した、ユーソナーの鈴木彩乃氏(営業本部 企画グループ 執行役員)は当時を振り返る。

 馬場氏がユーソナーのサービス導入を決めたのは、多岐にわたる企業データとそのスコアリングだ。本社データを保有している企業のサービスは他にもあったが、ダスキンが必要としているデータは、実際に同社のレンタルサービスや掃除サービスを必要とする営業所や店舗に当たる。スコアリングも、その企業の経営基盤や商取引だけでないさまざまな情報を網羅的に考慮し算出している。

 データベースと自社のデータを照らし合わせることで、営業状況の可視化やデータベースを基にした今後の営業戦略の立案にもつながる。「統合したデータベースを基に営業支援ツールを活用し営業戦略を練っていきたい、というのが導入の動機です」と話す。


ユーソナーの企業データベースをダスキンはどのように活用しているのか?(画像:ユーソナー提供)

 現在はユーソナーのサービスを活用し、営業DX実現に向けた取り組みを進めているが、馬場氏は「創業のころからデータ連携問題には苦労していた」という。

 当時は膨大な顧客データが、部署別・加盟店別にサイロ化された状態で格納されていたため、グループ内にデータが散在していただけでなく、顧客企業の系列情報や基礎データも不足していた。グループ全体での取引状況の可視化が難しかったという。

 現場はそれぞれのルールで顧客データを管理して、商品を納品しているのでトラブルは発生しなかった。しかし登録情報の表記などがバラバラなため、本部はいろいろな検索の仕方をしてやっと取引状態の全体像を把握していた。

 「正確な数字が把握できていなかったので、シェア率を言うときなどは『約〇%です』みたいに約をつけていました。そんな約の付くデータが本当に信憑(しんぴょう)性があるのかっていう話なのですが、そうせざるを得なかった」(馬場氏)

 各システム内に散在するデータを名寄せし、漏れなくダブりなくマスターコードを付与した状態で統合し、精密なアカウントプランの立案につなげられるデータ基盤が構築されている状態が理想なわけだ。そうすることで、新規顧客や既存顧客に対する提案余地が可視化され、アップセルやクロスセル提案にも結び付く。


ダスキンはユーソナーをどのように活用しているのか?(画像:ユーソナー提供)

 データの整備はさまざまな可能性を生む。インサイドセールスの活動工数も飛躍的に改善した。

 「インサイドセールス用のターゲットリストの抽出もこれまで手作業で10日ほどかけて実施していましたが、約2日に短縮できました」とダスキンの小谷八郎太氏(法人営業本部 戦略マーケティング部 戦略企画室 室長)はそう振り返る。

 ユーソナー導入以前は用途別でツールを契約していたため、法人営業本部内のあらゆる場所にデータが点在しており統合されていなかった。そのため、かき集めたデータを何度もさまざまな条件で突合し、ターゲットリストを作成していたのだ。

 「必要なデータはあるのですが、名寄せもマスターコードの付与もされていない。記入漏れもあれば、必要なフラグが付いていないものもあって、本当にデータ統合がされていなかった」(小谷氏)

 データの整理と統合により長年の苦労から解放されたダスキン法人営業本部だが、しばしば営業現場で耳にする「新しい便利なツールを導入したのに使ってもらえない」という課題にはどう対処したのか。

 ダスキン法人営業本部では2つの取り組みを実施した。一つは「仕組み化」だ。SFAに案件を登録し、成約金額を入力しないと営業担当の成績に計上されない仕組みや、新規の取引先の登録時にはユーソナーツールから作成する運用をルールとした。

 もう一つは、定着化のためのツールの有用性と操作方法のレクチャーを複数回にわたって実施した。導入準備期間としての2カ月と本番稼働後の6カ月で合わせて20回以上のワークショップを開催。「定着を諦めない。諦めたときにはツールを解約する」という覚悟で運営したという。

 さらに「上司への報告のための資料作成も廃止した」と馬場氏は説明する。「上司が知りたいのは、顧客とどういう内容の商談をして、誰と会っていて、どう案件が進んでいるのかという部分です。フォーマットに則った綺麗な報告書は必要ない。報告を求める側の管理職も歩み寄るためにも、そこはばっさり捨てました」(馬場氏)

 これまでは複数のシステムを横断的に見ながら報告書を作成していたが、1つのシステムに統合させたことで、報告書がなくても、システム内の特定の場所を見れば全員が同じ目線で話ができるようになったのだ。現場からは「楽になった」という声が出ているという。

「数を打ったところで当たらない」 次の一手は

 ユーソナーのサービスを活用し営業DXを進めてきたダスキン法人営業本部、次の一手をどう考えているのか。

 ユーソナーの鈴木氏は「10年以上前とは営業スタイルが変わってきていると思います。当時はアタックリストを持って、『よし行ってこい』が主流でしたが、現在は名刺情報やライブアクセスなどのデジタル要素を掛け合わせて、量より質を重視されている印象です」という。

 それを踏まえ、馬場氏は「これまでの物差しは訪問件数や提案書数などでした。もちろん今でも大事な指標ではありますが、『数打てば当たる』が難しくなってきました。打ったところで当たらなくなってきているので、打った矢を必ず当てる、その命中率を高めることを今は目指しています」と次の一手について話す。

 具体的にユーソナーを活用し、どういったことを進めていくのか。馬場氏は「自社の強みの明確化」と「分析を生かした提案」を挙げる。

 ダスキンは清掃用具のレンタルサービスなどを行っているため、さまざまな業界で需要がある。それゆえに、何が強みなのかが明確に分かっていないのだ。レンタル先での需要も十分に把握できていないため、アップセル・クロスセルにつながるような提案にも結び付きにくい状態だという。

 「例えばコンビニさんでは当社のマットなどを使っていただいていますが、店舗の来店客数などによってマットのサイズや交換頻度は変わると思います。しかし現在はほぼ同じ。こちらからデータを基に提案ができれば取引の確度は上がると思います。また、そこのデータと当社の強みが整理されることで、営業による提案内容のバラつきも減らしていけると考えています」

 これまではその土台作りに時間をかけていたが、ようやく来期には動き出せそうだという。ユーソナーの鈴木氏の飛び込み営業がきっかけとなり、長い時間をかけて構築した関係と技術の芽が少しずつ出始めているようだ。

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