「働きやすさ」が「ゆるさ」に転じてしまうのはなぜ? 働き方改革の目的を探る:働き方の見取り図(2/3 ページ)
今回は、2025年の「働き方トレンド」を概観し、働き方改革の本来の目的について、考察してみたい。
2025年「働き方」関連の法改正もめじろ押し
職場環境をめぐる制度も、これらの変化を後押しするように整えられつつあります。労働基準法の改正で残業時間には上限が定められ、年10日以上の年次有給休暇が付与される働き手には5日以上取得させなければなりません。
育児・介護休業法では、子どもが生まれたら、男性も含めて育休に関する周知と休業の取得意向の確認を個別に行うことなどが義務づけられています。
さらには週休3日制を導入したり、完全テレワークやハイブリッド勤務の標準化、副業の推進、ジョブ型などと称される職務限定型の働き方を新卒社員にも適用するといった具合に、個別最適化を重視する独自制度を設ける職場も見られるようになってきました。
また、パワーハラスメントやセクシュアルハラスメントはもちろん、カスタマーハラスメントの防止策にも注目が集まり、公益通報者保護では報復による解雇や懲戒などを行った会社への刑事罰が検討されるなど、働き手を守り職場側の責任が重くなる取り組みは増加拡大傾向にあります。
職場に対して働きやすい環境整備が求められる傾向は、2025年以降も続いていく予定です。育児・介護休業法の更なる改正で、2025年4月から子の看護休暇の対象は小学校3年生修了まで引き上げられます。また、家族を介護したり、3歳未満の子を養育する働き手がテレワークを選択できるよう措置を講ずることが職場の努力義務となります。
さらに、高年齢者雇用安定法では同じく2025年4月から希望者全員に65歳までの雇用機会確保が義務づけられますし、障害者雇用をめぐっては2024年4月に2.5%へと引き上げられた法定雇用率が、2026年7月からはもう一段引き上げられて2.7%になります。
他にも最低賃金をはじめ、今年の春闘でもさらなる賃上げ要請が確実な状況も働き手にとっては追い風と言えるでしょう。このような流れを追っていくと、2025年以降もより働きやすい方向へと進むことは間違いなさそうですし、それ自体は働き手にとって望ましいことに違いありません。
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