自社に合ったAIを“育てられる” ソフトバンク子会社が発表、コンタクトセンター向け新サービスは何がすごい?:潜在市場「9.2兆円」を見込む
ソフトバンクのグループ会社で、生成AI開発に注力するGen-AXは1月23日、コンタクトセンターやバックオフィス部門向けに、照会応答業務の効率化を支援する生成AI SaaS「X-Boost(クロスブースト)」の提供を開始した。
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【注目の基調講演】生成AIを社員約1.8万人が利用、平均3.3時間を削減――パーソルHDの“AI推進大作戦”、その舞台裏
ソフトバンクのグループ会社で、生成AI開発に注力するGen-AX(東京都港区)は1月23日、コンタクトセンターやバックオフィス部門向けに、照会応答業務の効率化を支援する生成AI SaaS「X-Boost(クロスブースト)」の提供を開始した。
コンタクトセンターやバックオフィス業務向けの生成AIサービスは既に他社もさまざま提供しているが、「X-Boost」はどう差別化をしていくのか。砂金信一郎・代表取締役社長は同サービスの特徴を「導入企業が自社のデータを活用し、現場に合ったAIに“賢く育てる”ことができる点」だと指摘する。
自社で育てられるAI……? 「X-Boost」3つの強み
「X-Boost」は、コンタクトセンターやバックオフィスなどにおけるさまざまな照会応答業務を支援する生成AIサービス。顧客からの問い合わせに回答する際に必要となる社内外の確認業務を自動化。オペレーターが問い合わせ内容を入力すると、マニュアルやFAQなどの膨大な社内データからナレッジを検索し、最適な回答案を自動生成する。
担当者は「X-Boost」には3つの強みがあると話す。
1つは直感的なUI/UXだ。現場で使いこなせるように、シンプルで簡単に操作可能な設計にした。新規の問い合わせを受けたら、日付や契約日、問い合わせ種別といった必要情報と問い合わせ内容を入力するだけで、回答情報を検索できる。
2つ目はLLMOps(Large Language Model Operations:LLMの管理に使用される運用手法)によるAIモデルの最適化だ。ノーコードかつ少ないステップで運用できるようにするなど、運用側のUI/UXも極力シンプルに。非エンジニアでも簡単かつ効率的に使える仕組み構築した。AI運用人材、ノウハウの不足に悩む企業が多い中、誰でも使いやすい設計を目指す。
例えば、社内データを取り込む際、データを決められた形式に合わせたり、不必要なものを削除したり、整理する必要がある。「X-Boost」は低品質なデータを自動で除去・整理できるので、人手を要する前処理の必要がなくなる。
また、「X-Boost」は導入企業が保有する社内データを活用し、それぞれの会社で専用のAIモデルを構築する。例えば、“社内言語”といわれるような個社独自の業務ワードを理解するように学習させたり、社内のルール変更に対応したり、自社の特性に合ったAIに賢く育てられることが特徴だという。
3つ目はセキュリティ。国内サーバでの管理と、データは導入企業専用のAIモデルでの学習だけで使用し、汎用AIモデルの学習には使用しない点を強調した。
9.2兆円の潜在市場 7業界に絞って勝負へ
23日に実施された発表会で、ソフトバンクの藤長国浩COOは、コンタクトセンター領域の市場規模は約10兆円を見込んでいるとした。その中で、大手企業におけるアウトソーシングを中心とした既存市場は1.1兆円とし、潜在市場は9.2兆円に上ると想定している。
「X-Boost」はまず、精密機器、自動車、ソフトウェア、カード、保険、銀行・証券、小売――7業界に特化し提案を強化する姿勢だ。昨今、コンタクトセンターにおける生成AI活用、VoC活用がブーム化している。「X-Boost」が他社との差別化に成功するのか、同サービス導入企業で、AIはどのように“育っていくのか”、今後の動向にも注目したい。
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