窮地の日産、ホンダとの協議開始は「最後の審判」か 統合に至るまでに乗り越えるべき課題(2/4 ページ)
年末、日産とホンダが経営統合に向けた協議を開始したというニュースが衝撃を呼んだが、果たしてうまくいくのか。まだまだハードルはありそうで……。
7つの統合メリット、重要度が高いのは?
会見でホンダ・日産が強調した統合メリットを整理します。会見では、大きく次の7点が挙がりました。
(1)EV、内燃機関車双方での車台の共通化
(2)研究開発機能統合による開発力の向上
(3)工場相互利用による稼働率の向上
(4)部品共通調達による供給網の最適化
(5)システムや間接業務の統合による経費削減
(6)販売金融統合による新サービスの提供
(7)人事・技術交流による優秀人材の確保
このうち(6)や(7)は一朝一夕に実現できるものではなく、現現時点では全くの絵に描いた餅といっていいでしょう。目先で最も現実的に効果が見込めるものは、生産部門に関するものと考えられます。具体的には上記の(1)(3)です。
特に(3)は、日産の工場リストラとセットで取り組むべき最優先課題で、統合効果の観点からは(1)も優先度合いが高いでしょう。一般的に車台の新規開発には数百億円規模の投資が必要であり、1つの車台で2社分、より多くのモデルが生産できれば、両社合算でのコスト削減はかなり大きなものを期待できるからです。
その他、(4)も実効性が高いと見られます。しかし、自動車業界特有といえる下請け企業との独特な関係があり、一つの共通部品について、ホンダと日産どちらの下請けに寄せていくのか、それを決めるのはかなりハードルが高いでしょう。
昔と比べれば「ケイレツ」構造は弱くなったとはいえ、下請けいじめ問題がいまだにくすぶっている実情を見ても、業界ピラミッドの存在は否定しがたいのは間違いありません。部品の共通化を進めるなら、両社で3万社を超えるとされるサプライチェーンの再編も必至であり、こうした業界特有の特殊事情が統合効果の即効性を失わせる可能性は否定できません。
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