フジテレビの余波で放送局の“ガバナンス”は強化されるか?:ABCテレビ取締役も辞任
フジテレビの問題が同社の経営にどこまで影響を与えるのか。今後はどうなるのか。現状では見通せない。スポンサー企業だけでなく、株主や視聴者といったステークホルダーが同社のコーポレートガバナンスに疑義を抱いていることが根本的な問題だ。
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長い会見だった──。
1月27日にフジ・メディア・ホールディングス(FMH)が開いた記者会見で、フジテレビジョンの港浩一社長、嘉納修治会長の辞任が発表された。記者会見は10時間を超えたものの、CMを差し止めた80を超えるスポンサー企業からの信頼は揺らいだままだ。この問題が同社の経営にどこまで影響を与えるのか。フジテレビの今後はどうなるのか。現状では見通せない。スポンサー企業だけでなく、株主や視聴者といったステークホルダーが、フジテレビのコーポレートガバナンスに疑義を抱いていることが根本的な問題だ。
同社に厳しい目が向けられる中、他局でも“引き締め”の動きが出ている。朝日放送テレビ(ABCテレビ)は1月28日、臨時取締役会を開き、清水厚志取締役からの1月31日付での辞任の申し入れを承認したと発表した。同局は清水取締役について「社内のルールに反して交際費(会食費用)を不適切に使用していた疑いが発覚した」と説明している。
フジテレビの影響は? 放送局に“ガバナンス強化”の動きは生まれるか
同局は清水取締役の辞任の背景を「調査の結果、実際は社内やグループ内のメンバーのみで会食したにもかかわらず、社外の関係者が出席していたと偽って交際費を申請していたことが判明した」と説明した。
その上で「本人も責任の重大性を認識し、過去にさかのぼって弁済することを確約するとともに、任期途中での辞任の意向を示すに至ったことから、これを了承した」という。同局は以下のようにコメントしている。
「高い倫理感をもって業務を遂行すべきメディア企業において、その先頭に立つべき取締役としてあるまじき行為であり、当社に信頼を寄せていただいていた社内外の全ての皆さまに心よりおわび申し上げる。役職員一同、あらためて襟を正すとともに、社内体制を再点検し、不正防止に努めていく」
中居正広氏の女性トラブルと、トラブルに対して社員の関与があったのではないかという『週刊文春』の報道に端を発したフジテレビの問題。その後『週刊文春』(電子版)は、2024年12月25日に配信した「中居正広9000万円SEXスキャンダルの全貌 X子さんは取材に『今でも許せない』と…」に対して、以下のように訂正文を追加している。
「【訂正】本記事(12月26日発売号掲載)では事件当日の会食について『X子さんはフジ編成幹部A氏に誘われた』としていましたが、その後の取材により『X子さんは中居に誘われた』『A氏がセッティングしている会の”延長”と認識していた』ということがわかりました。お詫びして訂正いたします。また、続報の#2記事(1月8日発売号掲載)以降はその後の取材成果を踏まえた内容を報じています」
事件当日の会食に、X子さんを誘ったのがフジテレビ編成幹部A氏なのかどうかは、同社が組織的に関与していたかどうかを示す重大なファクトだ。『週刊文春』はここにきて、非常に重要なファクトを“極めて静かに”訂正したことは指摘しなければならない。
ただ一方で、世間やステークホルダーは中居正広氏の女性問題以上に、この事件によって明らかになったフジテレビの企業体質に対して、厳しい目を向けていることも事実だ。1月27日の“10時間会見”に、同社で権力を握っているとされる日枝久氏が登場しなかったことや、女性問題について同社のコンプライアンス推進室へ情報共有しなかったことなどが“炎上”し、スポンサー企業のCMキャンセルは当分、収まりそうにない。
「被害女性に配慮した」としながらも中居正広氏を起用し続けるなどトラブルに適切に対応できなかったことに加え、一部のメディアにしか開かれなかった1月17日の“クローズド会見”などへの批判が集中し、フジテレビやFMH経営陣の経営責任を問う声がやまない状況だ。フジテレビの港浩一社長、嘉納修治会長の辞任が発表されたものの、今後の同社の経営の道筋は見えない(フジテレビ社長交代、新社長の経歴は? 『ドラゴンボール』『ちびまる子ちゃん』など手掛ける参照)。
同社の影響はABCテレビをはじめ、他局にも及んでいるようだ。TBSホールディングス傘下のTBSラジオは1月27日、フリーアナウンサーの生島ヒロシ氏に重大なコンプライアンス違反があったとして、同氏がパーソナリティーを担っていたラジオ番組を、同日の放送をもって降板したと発表した。生島氏にTBSグループの人権方針に背く重大なコンプライアンス違反があったことを確認したからだと説明している。
フジテレビ問題の影響によって、日本の放送局、ひいては日本企業全体の内部統制が強化されるかどうかは注目すべきテーマだ。記者は、フジテレビが1月17日の時点で今回のような開かれた記者会見を実施していれば、ダメージは現在よりも抑えられたのではないかと感じている。港社長の指示のもと、ネットメディアやフリーランスのジャーナリストなどを排除する“クローズド会見”を開いたこと、そしてその会見の中で日本弁護士連合会のガイドライン(指針)に基づく第三者委員会を設置すると明言しなかったことが大いなる反発を招いた。この“隠ぺい体質”が、フジテレビ不信の根本にあるのだ。
フジテレビの清水賢治新社長は、4月以降のCM販売交渉が事実上止まっていることを会見の中で認めている。今後は3月末に公表見込みの第三者委員会の報告書の内容に注目が集まるものの、フジテレビの経営にとっては険しい道のりとなりそうだ。
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