西友の売却に見る「総合スーパー」の終焉 かつてダイエーと争った“王者”の行方は?:小売・流通アナリストの視点(6/6 ページ)
小売りの王様とされていた総合スーパー。生き残りをかけた変革が、今進んでいる…。
“地の利”がなくなった今、総合スーパーに終焉の時が迫る
イトーヨーカ堂が大都市郊外でも大量に閉店したことがニュースになっていたが、その大半が1970〜90年代にできた、まさに「前世紀の遺物」であった。首都圏や京阪神でも、店舗がまだ使える場合は上層階をテナント化し、食品スーパーとして残っているが、老朽化した店舗はその役目を終えた。実際、閉店する総合スーパーを利用していた周辺住民も、上層階の非食品売り場の利用頻度はかなり低かったはずだ。大都市部の西友やイトーヨーカ堂などの総合スーパーが今まで存続できたわけは、ひとえに“地の利”があったからなのだ。
総合スーパーは昭和の時代には大いににぎわい、小売の王者と見なされていた時期もあった。しかし、それは専門店の集積が完了するまでの暫定的なワンストップショッピング(1カ所で多様な商品を買えること)の場所だったと考えればいいかもしれない。頻繁に買いに行く食品に関しては、消費者の最大の選択要因は「近い」ことであるため、人通りの多い駅周辺でなら食品スーパーとしてなんとか存続できる。しかし、時間をかけて選びたい衣料品や雑貨などについては、少し離れていたとしても、専門店が集積された場所があれば、もはや総合スーパーは選ばれない。
今や単独で総合スーパーを新設する企業がないという事実は、総合スーパーに終焉の時が迫ってきていることの証左である。
著者プロフィール
中井彰人(なかい あきひと)
メガバンク調査部門の流通アナリストとして12年、現在は中小企業診断士として独立。地域流通「愛」を貫き、全国各地への出張の日々を経て、モータリゼーションと業態盛衰の関連性に注目した独自の流通理論に到達。
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