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博報堂流「生活者の心を動かす」CX開発〜菓子メーカーを例に徹底解説〜オン・オフラインの融合(2/3 ページ)

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生活者体験が重要性を増す 2つの要因

 生活者体験が重要になってきている背景としてまずあげられるのは、「あらゆる商品やサービスがコモディティ化してきている」ということです。同時に「顧客接点の多様化と長期化」ということも見逃せません。

あらゆる商品やサービスのコモディティ化

 今は製品の質が、ほとんど満足できるレベルに達しているため、ブランドや商品の差がつきづらい時代です。また、生活者だけではなく、家電製品や自動車など、あらゆるものがスマホ、あるいはインターネットと接続していて、生活者、企業、社会の三者が常時接続している状態が生まれています。

 つまり、「モノ×デジタル」「場所×デジタル」「人×デジタル」といった具合に、リアルとデジタルの関わり方も、テクノロジーの進歩とともに複雑化しています。さらに、SNSが発展したことで、情報がリアルからデジタルに拡散されたり、あるいはデジタルからリアルの方に流れたり、リアルとデジタルが境目なく融合しているのが、今という時代の特徴です。

顧客接点の多様化と長期化

 顧客接点が長期化するときの課題について説明します。これまではブランドが成長するためには、新しい顧客を獲得していくことが大事だと思われていました。しかし、国内市場の成長自体が鈍化していくに伴い、新規顧客を獲得するということ以上に、いかに既存顧客を維持していくか、あるいはファンとして育てていくかが重要になってくると思われます。

 このことを説明するためによく用いられるのが「1:5の法則」です。これは、顧客維持と較べて新規顧客を獲得するためには、5倍のコストがかかるということを表現したものです。

 また、「5:25の法則」というのもあって、顧客の離脱を5%抑えることができれば、利益率が25%向上するということも経験則的に言われています。

 これらのことから、生活者体験(CX)の視点でブランド価値を生み出すためには、以下3点が重要になってきます。

  • コモディティ化が進む中でどう価値の違いをつくるか?
  • どう接点を作り、生活者とつながるか?
  • どうファンになってもらうか?

 生活者体験のチャンスについてもお話させていただきます。

 まず、今は情報爆発の時代を越えて、「接点爆発の時代」といえます。つまり、あらゆる顧客接点が、生活者の心を動かす、ブランド体験の心臓部になり得るわけです。実際、こうしたチャンスを捉えてCX改革に成功している企業や事例が、次々と生まれてきています。

 例えば、マットレスブランドが百貨店で売るだけではなく、ビジネス街に仮眠スペースをオープンして接点を作ったり、ネットスーパーのアプリが物価データと連動することで、インフレに優しいレシピを提案するサービスを進化させたり、あらゆるタッチポイントが心を動かす体験の場になる可能性を秘めているのです。

デジタルとリアルを融合し、CXを考える方法

 今まで述べたようなビジネス環境、また大きなチャンスがある中で、私たちは「博報堂が企業フィロソフィーとしてきた生活者発想というDNAを、エクスペリエンス領域に拡張できないか?」「あらゆる接点を、生活者の心が動くブランド体験の場にできないか?」と考えました。そうした思いから生まれたのが、今回ご紹介する「CX heart」です。

 「CX heart」は、CX改革のためのデジタル・リアル融合体験開発プログラムで、オンオフを融合させ、企業アセットを統合しながら、CX改革の一歩目となる“コア体験アイデア”を社内関係者の皆さんとワークショップ方式で開発していくものです。

 「CX heart」は2つのツールを活用して進めます。1つ目のツールは、これまで培ってきた生活者発想を拡張し、3つのステップ(視点)からオンオフ融合のコア体験アイデア発想を支援する「3つの生活者発想」です。

 具体的には、以下の3つのステップで進めます。

  • 生活者シーン発想
  • 心動かす体験価値を発想する生活者インサイト発想
  • CX全体を統合するコア体験装置へと発展させる生活者エコシステム発想

 そして、次のツールは、3つの生活者発想で生まれた体験アイデアを1枚のシートで俯瞰する「CX heart Map」です。CXのアイデアは複雑で多岐にわたる傾向があるので、社内での共有やコンセンサスを得やすいように、1枚のMapにするのがポイントです。

 オンラインとオフライン、あるいは生活者視点とブランド視点を横断し、掛け合わせながら、コア体験アイデアを社内関係者の皆さんと開発していくわけですが、このMapがプログラムのゴールになります。

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