誰もが加害者になり得る 知っておくべき4つの「カスハラスイッチ」:働き方の見取り図(3/3 ページ)
カスハラがハラスメントの一つとして問題視されるようになったのは、まだここ数年のことで、労災認定基準にカスハラが加えられてからは2年足らず。この流れのまま法律で職場に対策が義務づけられれば、社会からカスハラはなくなっていく……?
従業員を守るために職場ができること
カスハラスイッチがONにならないようにするためにはまず、誰しもがスイッチを所持している可能性を認識しておくことが第一歩です。自らがカスハラ加害者になりえ、スイッチONの典型例として4種類あることを認識しておくだけでも気をつけやすくなり、スイッチが入った時に自らOFFにしやすくなります。スイッチが入った他者に忠告することもできるはずです。
顧客のカスハラスイッチをOFFにできない時、職場は従業員を守らなければなりません。首都高速道路では独自の基準を設けてマニュアルを作成し、カスハラに該当する電話については一定の基準にもとづいて切電するという対応をとって実践しています。
米メジャーリーグでは、昨年のワールドシリーズの第4戦で選手に悪質な守備妨害を行ったファンを無期限の追放処分としました。プロスポーツ業界にとってファンは、観戦料やグッズ購入などで収入を支えてくれる大切な顧客に違いありません。
一方、球場など試合が行われる場所は職場であり、契約形態は雇用でなくとも選手はそこで働く人たちです。悪質な行為に無期限追放という重い処分を科したことは、対象となった顧客から得られる収入より、働き手である選手の安全を守る方を選ぶというスタンスを職場側が示したことになります。処分されたファンは、二度と球場で野球観戦できなくなってしまいました。
どれだけ法律を整備しセルフチェックしてスイッチOFFを心掛けても、いざカスハラが発生してしまえば従業員を守る責任は職場に生じます。ファンが野球観戦できなくなってしまったように痛みは伴うものの、毅然と対処する職場が増えるほど、顧客側は自らの身に置き換えてチェックし、カスハラの発生が少なくなるという循環が生じていくのではないでしょうか。
著者プロフィール:川上敬太郎(かわかみ・けいたろう)
ワークスタイル研究家。1973年三重県津市生まれ。愛知大学文学部卒業後、大手人材サービス企業の事業責任者、業界専門誌『月刊人材ビジネス』営業推進部部長 兼 編集委員の他、経営企画・人事・広報部門等の役員・管理職を歴任。所長として立ち上げた調査機関『しゅふJOB総研』では、仕事と家庭の両立を希望する主婦・主夫層を中心にのべ5万人以上の声を調査。レポートは300本を超える。雇用労働分野に20年以上携わり、厚生労働省委託事業検討会委員等も務める。NHK「あさイチ」他メディア出演多数。
現在は、『人材サービスの公益的発展を考える会』主宰、『ヒトラボ』編集長、しゅふJOB総研 研究顧問、すばる審査評価機構 非常勤監査役の他、執筆、講演、広報ブランディングアドバイザリー等に従事。日本労務学会員。男女の双子を含む4児の父で兼業主夫。
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