誰もが加害者になり得る 知っておくべき4つの「カスハラスイッチ」:働き方の見取り図(2/3 ページ)
カスハラがハラスメントの一つとして問題視されるようになったのは、まだここ数年のことで、労災認定基準にカスハラが加えられてからは2年足らず。この流れのまま法律で職場に対策が義務づけられれば、社会からカスハラはなくなっていく……?
「カスハラスイッチ」を4分類して見えること
罵詈雑言を浴びせられても、相手が顧客となれば従業員側は言い返せません。グッとこらえ、出来る限り笑顔を絶やさないよう努めます。それは従業員が本当の感情を抑え、職場の期待に応えるため無理しているということです。それだけ顧客という立場は重んじられています。
ただ、それを求めているのは基本的に職場側です。もし職場が、お客さまに丁寧に対応するのを基本にしつつも「明らかに理不尽な要求や横暴な態度を示すような相手は、顧客と見なさなくてよい」という方針を掲げたならば、従業員は自分の心情に寄り添って毅然と対処することができ、過度なストレスにさいなまれずに済みます。
さらに、法律や条例などによってカスハラ防止策が職場側に義務づけられれば、それらを根拠に職場としても思い切った方針が出しやすくなるはずです。結果、顧客側も自らの言動により注意するようになるのではないかと思います。
とはいえ、それでカスハラを完全に防止することは難しいでしょう。そんなつもりはなかったのに、冷静さを失ってよからぬ態度をとってしまうということは誰しもあるものです。日ごろおとなしい人が、自動車のハンドルを握った途端スイッチが入り、人格が変わったかのように荒々しい運転になるなんてこともあります。カスハラにおいても顧客の立場になった途端、横柄な態度になったり、威圧的な振る舞いになるなど「カスハラスイッチ」が突如ONになる人がいます。
カスハラを次のように4つに分類すると、自身の感情の自制や、感情的になった他者への対処に役立つ可能性があります。相手に対する優越意識の有無を縦軸、トリガー(発火要因)が「正義感」か「感情のたかぶり」かを横軸にとって分類してみます。
相手に対する優越意識があり、トリガーが正義感の場合にONされるのは「制裁スイッチ」です。間違いを犯した相手に、上の立場にいる自分が教育的指導を実施するかのごとく上から目線でしかりつけたりします。
一方、優越意識はないものの、トリガーが正義感である場合にONされるのは「義憤スイッチ」。おかしいものはおかしい、納得できないと、自分だけでなく他に同じ思いをする人が出ないようにしたいといった改善を求める言動が、過剰なまでに強くなってしまいます。
相手に対する優越意識があり、トリガーが感情のたかぶりである場合は「神様スイッチ」です。「お客さまは神様です」という言葉を「顧客は神様のように偉い」という意味に曲解しており、感情のままエラそうに振る舞ってしまいます。
それに対し、優越意識はなく、トリガーが感情のたかぶりである場合は「天然スイッチ」。本人としては気分が高揚するまま振る舞っていて、ただ楽しんでいるだけのケースもありますが、それらの振る舞いが相手にとっては迷惑で嫌がらせになってしまいます。
これらのスイッチは、決して特別な人だけに備わっているわけではありません。誰もが持っているものです。そしていつの間にかスイッチがONになり、自覚がないままカスハラの加害者になってしまうことがあります。
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