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誰もが加害者になり得る 知っておくべき4つの「カスハラスイッチ」働き方の見取り図(1/3 ページ)

カスハラがハラスメントの一つとして問題視されるようになったのは、まだここ数年のことで、労災認定基準にカスハラが加えられてからは2年足らず。この流れのまま法律で職場に対策が義務づけられれば、社会からカスハラはなくなっていく……?

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 今年1月、飛行機の時間に遅れて搭乗できないと告げられた医師が「うるせえ!」と怒鳴り、航空会社の職員を平手打ちして逮捕されたとセンセーショナルに報じられました。世の中でカスタマーハラスメント(顧客による嫌がらせ:カスハラ)への注目が高まっているにもかかわらず、簡単にはなくなりそうもないことがうかがえます。

 一方で、行政も黙って見ているわけではありません。東京都や三重県桑名市などでは、独自に条例を定めてカスハラ防止に取り組み、国もカスハラ対策を職場に義務付ける方向で検討を進めています。

 カスハラの存在がハラスメントの一つとして明確に問題視されるようになったのは、まだここ数年のことで、労災認定基準にカスハラが加えられてからは2年足らずです。

 それでも「お客さまは神様です」という言葉を曲解するなど、顧客という立場を笠に着て横暴に振る舞う人への世の中の認識は変わりつつあります。では、いまの流れのまま法律で職場に対策が義務づけられれば、社会からカスハラはなくなっていくのでしょうか。そう話は単純ではありません。


何のために「働きやすさ」を実現するのか? 写真はイメージ(ゲッティイメージズ)

著者プロフィール:川上敬太郎(かわかみ・けいたろう)

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ワークスタイル研究家/しゅふJOB総研 研究顧問/4児の父・兼業主夫

愛知大学文学部卒業。雇用労働分野に20年以上携わり、人材サービス企業、業界専門誌『月刊人材ビジネス』他で事業責任者・経営企画・人事・広報部門等の役員・管理職を歴任。

所長として立ち上げた調査機関『しゅふJOB総研』では、仕事と家庭の両立を希望する主婦・主夫層を中心にのべ5万人以上の声をレポート。

NHK「あさイチ」他メディア出演多数。


従業員が顧客にへりくだってしまうワケ

 カスハラが生じる原因はさまざまですが、以前書いた記事「異質さ際立つ『カスハラ』なぜ起きる? メカニズムをひも解く」でも指摘した通り、そのメカニズムは基本的にパワーハラスメント(パワハラ)と似ています。

 パワハラは、被害者に対する優越的な関係を背景とした言動が引き起こすハラスメントですが、顧客はまさに従業員に対して優越的な立ち位置です。その点を踏まえるとカスハラは、顧客という立場にある者が引き起こすパワハラの一種だといえます。

 しかしながら、顧客と従業員の立ち位置は人事制度などで上下関係が定められているといったものではなく、あくまで取引関係上の結びつきでしかありません。取引とはその商品やサービスを必要とする顧客が、同じ価値に相当するお金を払うことで成立します。その関係性は本来イーブンであるはずです。

 それなのに顧客の方が優越的な立場となってしまう大きな要因は、競合先の存在です。競合先があるからこそ、売り手は自らを選んでもらうためにさまざまな工夫改善に取り組みます。顧客を「お客さま」として大切に扱うのは、顧客に喜んでもらうためだけでなく、競合先に顧客を奪われないようにするためでもあります。

 ところが、自らを選んでもらおうとする姿勢が行き過ぎると顧客にへりくだる形になりがちです。すると、顧客優位の関係性が固定化され、理不尽な要求などにも逆らいづらくなってしまいます。カスハラが社会で問題視されているのは、それだけ顧客にへりくだるスタンスの職場が多いことの表われという面もあるのかもしれません。

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