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「コメ高騰の犯人=中国人」にしたがるマスコミ 本当に“得”をするのは誰かスピン経済の歩き方(4/8 ページ)

連日テレビでは「コメ高騰の犯人」が中国人だと報じているが、実はツッコミどころ満載のストーリーだ。なぜそう感じるかというと……。

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米の「先食い」が続いていた状況

 日本の米需要は年間およそ700万トンといわれている。2021年秋の主食米の収穫量は約700万トンだったのでトントンだ。しかし、減反政策と農家の高齢化も相まって翌2022年秋は約670万トン。需要より30万トン少ない。そして2023年秋は約661万トンなので「40万トンの米不足」である。つまり、日本のコメは近年ずっと需要を下回っていたのである。


主食米の収穫量推移(出典:農林水産省)

 そこにコロナ禍以降、訪日外国人観光客が急増して海鮮丼やら寿司を「爆食」したことで、一気に流通が滞って米不足が顕在化。スーパーからコメが消える事態になったわけだ。

 普通に考えたら、「減反政策の大失敗」であることは明らかだが、それを認めてしまったら農水省とJAは立つ瀬がない。減反は農業を滅ぼすと訴えていた涌井氏らの主張が正しいことが証明されてしまう。そこで捻(ひね)り出したのが、「新米が世に出回れば米不足は解決です」という言い訳だ。

 だが、冷静に考えれば、新米が出たくらいで解決するわけがない。

 基本的にわれわれの食卓にあがるコメは、少し前に出荷されたものだ。例えば、9月に食べるコメは8月に出荷されたものである。しかし、2023年8〜9月の時点でわれわれはすでにそれを食べ尽くしていて「40万トンの米不足」に陥っているので、9月に出荷されたものを即買いして大量消費した。これはつまり、10月に食べる分のコメを先に食べてしまったということだ。

 だから当然、10月にわれわれが食べているコメは本来11月に食べるものという感じで前にズレていく。こういう「先食い」が続くだけなので、「40万トンの米不足」は解決ではなく、先送りされているだけなのだ。

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