「2025年の崖」にどう立ち向かう? AIでレガシーシステムを可視化しDX推進(2/2 ページ)
市場の技術進化に対応できるようにする「モダナイゼーション」に取り組む必要性が一段と高まっている。属人化、ブラックボックス化などの課題にどう対応すればいいのか? ソフトウェアの品質保証を軸にさまざまなDX事業を展開するSHIFTの説明をもとに検討する。
SHIFTが提供するモダナイゼーションサービス
属人化を排除し、モダナイゼーションを阻む課題を支援するのがSHIFTのモダナイゼーションサービスだ。前述したブラックボックス化、ベンダーロックイン、投資価値判断といった課題に、4つのステップによるプロセスによって業務用件を再定義。アーキテクチャの刷新を推進させている。
1つ目のステップとなる「マイクロサービス境界分析」は、生成AIによるプログラム解析をし、マイクロサービスを実施する単位を決定させる情報を抽出するものだ。続いて「ビジネスロジック分析」のステップでは生成AIを活用し、業務要件を解析する上で、可視化すべき仕様観点単位での情報を抽出していく。SHIFTが独自に開発している「AIモダナイ解析ツール」により、ブラックボックス化した仕様の可視化を実現させるものだ。
投資価値判断においても重要なステップとなる「DXデザイン診断」では、SHFIT独自のUIスコアリング手法(顧客や見込み客の属性・行動履歴といったデータに基づいて、サービスへの関心度や購買意欲を数値化して評価する手法)を用いて、ユーザーの要求事項を満たす改善案を、専門家による評価レポートと、実装可能なワイヤーフレーム(Webページやアプリの設計図)を提案していく。
モダン開発のフレームワークとなる「モダナイゼーション開発」のステップでは、SHIFTのシステム開発フレームワークであるSHIFT DQS(Development Quality Standard)を用いて、機能仕様と業務仕様をもとに新たなモダンアーキテクチャを構築できるようにした。こうした取り組みにより、ベンダーロックインといった課題の解決にも寄与する。
生成AIがもたらすモダナイゼーションの効率化
SHIFTは、すでに50社以上に導入されている「AIドキュメントリバース」の技術を発展させた「AIモダナイ解析ツール」を開発している。これは、AIが自動的にプログラムコードを解析し、巨大なプログラムをステートメント単位に解析してデータベース化する。さまざまな観点で仕様情報をデータベースから抽出して整理することによって、データ項目単位の解析を可能とした。
さらに、AIモダナイ解析ツールの情報をもとに、マイクロサービス化の方法論も整備している。業務観点で機能をグルーピングし、マイクロサービス単位を仮決めする「マイクロサービス機能の境界分析」、システムのデータ更新処理に着目してデータの配置を整理する「マイクロサービスデータの境界分析」、マイクロサービス間のデータ参照箇所を抽出する「マイクロサービス依存性の分析」を経て、システムのコンポーネント間の依存関係が少なく、独立性が高い「疎結合アーキテクチャ」を実現するアプローチだ。
「現行システムの可視化が不十分なままマイクロサービス化を目指しても、見落としていたマイクロサービス間の依存関係が多く残ります。結果として(見た目はマイクロサービスなのに、実態は強く結合したモノリシックなシステムである)分散モノリスとなってしまい、品質面の対応でプロジェクトコストの肥大化を招きます。仕様を完全に可視化することがモダナイゼーション成功の鍵と考えています」(加藤氏)
今後の展望とモダナイゼーション市場の未来
モダナイゼーションの現状について、加藤氏は「現時点で(データやプログラムなどを作り直す)リビルドができている顧客は、大企業の先進的なところに限られているように考えています。まだクラウドを使っていない顧客に対して、少しずつでも理解していただくという点では、今後も長くやっていかなければならないテーマです。(モダナイゼーションの市場の需要は)今後、10年以上は続くと思います」と述べた。
モダナイゼーションの本質は単なるシステム移行ではなく、業務プロセスそのものの改革を伴うDXが求められている。SHIFTのモダナイゼーション戦略は、こうしたニーズに応える形で進化を続けている。
「2025年の崖」を乗り越え、DXを持続的に推進するためには、レガシーシステムの適切なモダナイゼーションが不可欠だ。同社のAI技術を活用したシステム移行が、企業の競争力向上にどのように貢献するのか。今後の進展に注目だ。
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