就航前に事故多発 海上を浮上航行「ホーバークラフト」が抱える課題とは?:後編(2/2 ページ)
大分市と大分空港を結ぶ新たな交通手段として、16年ぶりに再就航することになった超高速船「ホーバークラフト」。地域経済へのメリットが期待される一方で、課題も抱えているようだ。
運休多発? 安定運航にも不安が……
ホーバークラフトの本格運航開始を前に、2024年11月30日からは週末を中心にホーバーを使った有料の別府湾遊覧体験が実施されるようになった。県民の注目度も高く、ほとんどの航路が満席に近い状態で運航されているという。
一方で、大分ホーバードライブによると、2024年中の別府湾遊覧の運航実施率はわずか50%。運航予定だった便のうち半分が風や霧などといった悪天候を理由に運休しており、SNSでは県外からホーバーを体験しに来た人たちからの「わざわざ大分まで行ったのに乗れずに残念だった」という声も多くみられる。
もし大分と空港を結ぶとなれば、運休や遅延が多発したならば乗客の予定はもちろんのこと、大分空港の飛行機の運航自体にも大きな影響を与えかねないであろう。
「空港利用客の5人に1人」をホーバーに?
県は、新たなホーバークラフトの利用客数を年間30万〜40万人台と見込んでいる。これは、大分ホーバーフェリーが最多乗客数を記録した1990年(大分空港道路の開通前年)の約44万人に近い水準だ。2023年度の大分空港の年間利用客数が約184万人であることから、単純計算でいけば「空港利用客の5人に1人」ほどの利用を見込んでいることになる。
行政や県経済界からの期待も大きい「ホーバークラフト復活」であるが、先述したように別府や由布院、宇佐神宮などの有名観光地にはこれまで通り空港高速バスを使ったほうが安くて便利であるため、たとえ観光誘致により空港利用客が増えたとしてもそれがホーバークラフトの利用につながるとは言い切れず、いかにして乗客数を増やし、安定した運営につなげていくかが大きな課題になりそうだ。
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