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「また高層ビルが建つのか」 再開発はなぜ「負」のイメージが強くなったのか(7/7 ページ)

東京や大阪など、大都市部で再開発が盛んにおこなわれている。その意図は何なのか、そして“良い再開発”と“悪い再開発”の差は何なのか……。

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ミクロとマクロをすり合わせた再開発の姿とは

 とはいえ私とて、「国際競争を手放して昔ながらのノスタルジックな日本を残していくべきだ」とはまったく思わない。ミクロとマクロの「どちらか」を選択するのではなく、その「どちらの」目的もすり合わせていく必要があると思う。そして、そのバランスがうまく取れている再開発こそ、本当の意味で成功している再開発なのではないかと感じる。

 ここで改めて、冒頭のうめきた公園の話に戻ろう。私はこの意味で、うめきた公園の開発は成功だったと思う。

 うめきた公園でおもしろいのは、単純に短期的な利益だけを目的とした開発ではない一方で、国際競争力の強化を諦めてもいないことだ。

 この開発が決まった経緯は複雑だが、元々そこは巨大なスタジアムになる予定だったそうだ。しかし、それに対して当時の大阪市長だった橋下徹氏が反対 。ニューヨークのセントラルパークをイメージした「大阪セントラルパーク」を造成するとして、最終的にこのような形になったのである。


大阪での再開発のイメージ(出所:大阪市の公式Webサイト)

 その背景には、大阪を世界の諸都市と並ぶ魅力ある街にするという意図もあった。世界の都市を見渡すと、日本よりも多くの公園があり、緑が適切に配置されている。緑豊かな街が、国際的に魅力ある都市の条件となっているのだ。

 こうした競争は、すぐに成果が出るものではなく、長期的なものだ。しかし、結果的にはそれが市民にとっても利益になる。すでにこの公園が市民の憩いの場になりつつあることは述べてきた通りだ。マクロなレベルでの利益を長期的な視点から捉えることにより、ミクロなレベルの利益とのバランスが取れているのだ。

 こうした意味で再開発が成功している場所としては、下北沢もそうかもしれない。土地の制約から高いビルが建てられなかった下北沢では、再開発を主導した小田急電鉄と住民の間で何度も話し合いの場が設けられ、新しい下北沢の姿が模索された。結果、新しく作られた施設のほとんどは2階建てとなり、座れる場所や緑地も多く取り入れられた。それは結果として下北沢の街の魅力を高めている。こうしたバランスの良い再開発も生まれているのだ。

 これからも、さまざまな場所で再開発は進んでいく。その際、ここで提示した「ミクロとマクロな目的のバランス」は重要な視座になる。そのバランスをいかに保っていくのか。それがこれからの再開発の論点であり、成功かどうかの基準になるはずだ。

著者プロフィール・谷頭和希(たにがしら かずき)

都市ジャーナリスト・チェーンストア研究家。チェーンストアやテーマパーク、都市再開発などの「現在の都市」をテーマとした記事・取材などを精力的に行う。「いま」からのアプローチだけでなく、「むかし」も踏まえた都市の考察・批評に定評がある。著書に『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』他。現在、東洋経済オンラインや現代ビジネスなど、さまざまなメディア・雑誌にて記事・取材を手掛ける。講演やメディア露出も多く、メディア出演に「めざまし8」(フジテレビ)や「Abema Prime」(Abema TV)、「STEP ONE」(J-WAVE)がある。また、文芸評論家の三宅香帆とのポッドキャスト「こんな本、どうですか?」はMBSラジオポッドキャストにて配信されている。


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