突然、普通の街が観光地に! インバウンドが押し寄せる「ニッチ観光地」から考える日本観光のあり方(1/5 ページ)
インバウンド増加で、ニッチな場所が「観光地化」している。それによる観光公害が発生する中、私たちに必要な考え方とは。
「奇跡の9連休」と呼ばれた2024〜2025年の年末年始。特に目立ったのがインバウンド観光客だ。成田空港の推計によれば、2024年12月27日〜2025年1月10日までの国際線入国者数は約43万人で、前年の年末年始(2023年12月29日〜2024年1月7日)と比べ116%となった。
そうしたなか、メジャーな観光地に行き飽きたインバウンド観光客が、これまで観光地ではなかった場所に赴き始めた結果、「ニッチ観光地」が次々と生まれている。今回は、インバウンド観光客が訪れるニッチ観光地から、これからの日本の観光のあり方を考えてみたい。
「ローカルな暮らしが見られる」という高円寺の魅力
インバウンドに人気の観光地といえば、渋谷や新宿だ。東京都によれば、それぞれの訪問率は1位と2位で、特に渋谷はインバウンド全体の約70%が訪れているというから驚きだ。しかし、そうしたメジャーな観光地とはいえない「普通の街」にも、インバウンド観光客が多く押し寄せている。
皆さんも街を歩いているとき、「なぜこんな場所に、インバウンド観光客がたくさんいるのだろう?」と思ったことはないだろうか。
これは本記事の担当編集者から聞いたのだが、「2024年の年末年始は、高円寺に例年にないほど多くの外国人がいた」そうだ。東京を知っていると「高円寺は商店や住宅がある街で、観光地ではないのでは?」と思ってしまう。調べてみると、2024年の夏には「東京高円寺阿波おどり」の外国人向けツアーが実施されるなど、インバウンド観光客向けの取り組みを行っていないわけではない。しかし、他の街に比べると、そうしたツアーが際立って多いわけでもないのだ。
ただ、外国人向けの旅行サイトなどを見てみると、個性的な店が立ち並ぶセントラルロードや純情商店街など、高円寺が持つある種の「カオス」さが、「日本らしさ」を感じさせているらしいことが分かる。2016年の記述だが、自治体国際化協会のレポートによると、高円寺はローカルな街として外国人に知られるようになったそうだ。インバウンド観光客は「知る人ぞ知る、生の日本の街」像を、高円寺に見出したのかもしれない。
日本人にとって高円寺は、商店や飲み屋、住宅がひしめく街でしかない。しかし、そこがにわかに「観光地」になっている。まさにニッチ観光地というにふさわしい街だ。
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