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Googleが“韓国で唯一”投資 学習アプリ「QANDA」運営元Mathpressoの実力190億円を調達(2/2 ページ)

AIを活用した学習プラットフォームQANDAを運営し、Googleが韓国で唯一投資したソウル発のエドテックスタートアップMathpressoの共同創業者 兼 CEOのRay Lee氏に、今後の展望を聞いた。

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Googleがマスプレッソに投資した理由

 現在、利用しているAIはChatGPT、LLaMA 3、そしてGoogleのGeminiだ。Meta公式ブログでも、マスプレッソが紹介され「LLaMA 2を活用して高度にパーソナライズされた学習プラットフォーム」とレポートされた。

 Googleがマスプレッソに投資した理由は、Googleも教育事業に興味があったからだという。もう一つの理由は、QANDA Appは写真を撮影し、回答を検索する仕組みで、Googleと同じく検索アプリでもあるからだ。 一方、たとえ同じ質問をGoogleで検索をしても、回答は出てこない。

共同創業者の「グランドルール」

 レイ氏は、学生時代に起業した。CEOの役割や仕事の仕方を学んだことはない。

 「会社を運営したこともなかったので、当初は何も分かりませんでした。現在は韓国、インドネシア、ベトナムなど全世界に200人以上の社員を擁しています。CEOの役割は、社員、株主、投資家、顧客にビジョンを伝えることだと思います」

 複数人での経営は、簡単でないといわれるものの、マスプレッソではうまくいっているようだ。その秘訣を聞いてみると、2人の共同経営者の間に「グランドルール」があるからだという。

 ジェイク氏はプロダクトと技術を担当し、当分野の全てを判断する。一方レイ氏は、事業開発やグローバルビジネスを担当するといったように役割を分担しているのだ。自然に役割を分担するようになった背景として、ジェイク氏はAIなどのテクノロジーに関心があり、レイ氏はエデュケーションそのものに興味があったからだと話す。

 レイ氏はビジネスのアイデアを出し、ジェイク氏がそれをQANDA Appとして実現した。2人には深い信頼関係があり、それぞれが、それぞれの判断を強く信じ、リスペクトし合っている。レイ氏は「うまくいっている理由の一つに(知り合った当時の)若さもある」と話す。若いころの夢を当時、2人で語り合い、一緒に実現したいという思いが現実となったのだ。


Mathpressoのオフィス(同社提供)

設立時からグローバルを意識

 マスプレッソは、設立時からグローバル展開を意識して企業を運営してきた。というのも韓国の市場だけでは限りがあるため、もともとグローバルにビジネス拡大をする必要があったからだ。日本のスタートアップのほとんどが、国内でのビジネス展開のみを考えている。韓国のスタートアップはグローバルビジネスについて、どう考えているのかも聞いてみた。

 「市場の大きさからも、韓国以外の国でビジネス展開をする必要はありました。そうは言っても、他国でのビジネスは簡単ではありません。ただ本質を考えてみると、根底にある課題は同じです。つまり学生は、問題をいかにして解いていくべきかを質問したいということです。その回答を教えていくプロセス自体に、国による違いはありません。場所やお金に依存しないのです。より良い教師からいつでも、どこでも授業を受けられる教育環境は、国に関係なく求められているはずだと考えたのです」

 しかし各国の教育事情は全く違う。韓国は、大学進学率が世界でもトップレベルだと言われている。日本のように専門学校がなく、国民の多くが大卒だ。だからこそ、この激しい受験市場で成功したという実績は重要だった。この強みをベースに、他国へアプローチしたのだ。実際にベトナムの塾を買収し、ビジネスを展開した。


Mathpressoのオフィス(同社提供)

日本でのビジネス展開

 B2CのQANDA Appは、多くの学生がすでに利用している。ダウンロード数では常時、上位にランクインしている状況だ。これからはB2BのQANDA Tutorのビジネス展開を考えている。日本進出では戦略的なビジネスパートナーとの提携が必要だ。

 「当社の強みであるデータセット、AI、そして韓国を含むアジアでの成功事例をもとに、日本市場でも既にプレゼンスのある戦略的パートナーの皆さんに利用していただいています。塾だけでなく、教科書・問題集制作会社などもその一つですね。どこにいても同じ高質教育を安価に提供するためにQANDAのプラットフォームを作りました。同じことを日本でも普及することを目指しています」

 2025年2月には文部科学相の諮問機関である中央教育審議会の作業部会が、デジタル教科書を正式な教科書として認める方向性を示した。今後はこのデジタル教科書とマスプレッソのようなAIプラットフォーム企業が掛け算されることによって、場所や教師に依存しない、パーソナライズされた教育環境が整っていきそうだ。

著者紹介:平野貴之

ベアーレ・コンサルティング株式会社 代表取締役社長(CEO)。

イタリア・オリベッティ社に入社し、英国ケンブリッジ大学との共同最先端技術の部隊「マルチメディアタスクホース」に選ばれ、NTT、日本IBMなど最先端技術販売に成功し、社長賞、トップセールスなど多数受賞。その後、日本初上陸最先端テクノロジーに魅かれ、米国DirecTV技術を利用した通信衛星インターネットサービス会社の立ち上げに設立から従事し、ソニーミュージック、ソフトバンク(当時、日本テレコム)、日立電線などから3億5000万円の出資を受け新会社ダイレクトインターネット社設立に成功。

日本をはじめ、香港、マレーシア、インドネシア、シンガポール、オーストラリアなどグローバルビジネスデベロップメントも経験。

最先端テクノロジーを誰でも、いつでも、どこでも利用できるような、豊かな未来創りに少しでも役立っていきたい、もっとスピード感のある日本社会、そして幸せな生活プラットフォーム作りを支援し、提供していくために、1996年ベアーレ・コンサルティング株式会社を設立。

イスラエルビジネスのパイオニアとして、2001年からイスラエルハイテクスタートアップ企業への支援事業をスタート、現在も支援事業を拡大中。

ベアーレ・コンサルティング株式会社の公式サイト

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