「夫婦共働きはご遠慮いただく」──職場結婚→雇い止めで物議の宮崎産業経営大、法的問題は?:弁護士が解説(2/2 ページ)
宮崎産業経営大学(宮崎市)で、「教員同士で結婚した夫婦の妻が、大学から雇い止めを通告された」というニュースが話題になっています。社内結婚では、片方が異動に伴いキャリアチェンジを強いられることも多いですが、こうした対応は、法律上問題はないのでしょうか? 宮崎産業経営大のケースに基づき、コンプライアンス問題に詳しい佐藤みのり弁護士が詳しく解説します。
社内結婚で片方が「異動」 法律的な問題は
結婚の自由が認められているものの、社内結婚をした場合、片方が異動になるケースが多く存在します。職場結婚をしたら女性が異動することが慣行になっている企業もあるように思います。
しかし、労働者の配置などについて、性別を理由として差別的取り扱いをすると、男女雇用機会均等法に反するため、改めるべきでしょう。
同じ職場に夫婦がいると、周りが気を遣うなどの問題が起こる可能性もあり、職場内の秩序維持や業務の円滑な運営のために、結婚を機に社員を異動させることは、法的に問題なく行えることも多いです。ただし、結婚を理由に閑職に追いやり、実質的に退職を強制するようなケースなどは違法になります。
また、転勤の多い業種では、夫婦の片方が転勤するとなった場合、もう片方がついていくために「給与を減らして勤務地の融通を利かせてもらえる制度」が存在することもあります。
本人の希望に合わせ、「給与を減らして勤務地の融通を利かせる制度」があったとしても法的に問題はありません。ただし、従業員が希望していないのに、会社側から結婚したことのみを理由に、給料減額を伴う異動を命じる場合には問題になります。
女性にだけ負担が偏らない仕組みを
社内結婚の促進を目指す会社もある中で、このように結婚によってキャリアが絶たれてしまったり、不当な扱いを受けたりしてしまうのは問題だと考えています。
結婚、妊娠、出産を機に、特に女性は生活が大きく変わりやすいものです。育児に関連するさまざまな制度を充実させ、育児期間中も仕事やキャリアアップのための勉強をしやすい環境を整えることは大切でしょう。また、無理せず、長期的にキャリアアップできる仕組みがあると、希望を持って働き続けられるように思います。
家事や育児は性別にかかわらず取り組めるものなので、そうした負担が女性だけに偏ることのないよう、会社としても従業員の意識改革を進めることが大切でしょう。
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