窓際でゲームざんまい……働かない高給取り「ウィンドウズ2000」が存在するワケ(1/2 ページ)
「ウィンドウズ2000」「働かない管理職」に注目が集まっている。本記事では、働かない管理職の実態と会社に与えるリスクについて解説する。
昨今、世間では「働かないおじさん」が話題になっています。先月は、XなどのSNSを中心に「ウィンドウズ2000」(大手商社などで年収2000万円をもらう窓際社員を指す)が話題を集めていました。
働かないおじさんは40〜50代の中高年社員であり、その中には管理職者も含まれます。今年1月、業務用PCで勤務時間中にゲームなどをしていたとして、横浜市に勤務する職員(係長)が懲戒処分を受けるなど、「働かない管理職」にも注目が集まりました。
本記事では、働かない管理職の実態と会社に与えるリスクについて解説します。
どこからが「働かない管理職」か
まずは1つ、事例を紹介します。
事例
甲社(従業員数500人)の管理課長であるAさん(以下「A課長」。管理課はA課長の他に課長代理1人、主任3人、課員15人が所属している)は、出勤後自席に着くとPCを立ち上げ、マウスを握りながら四六時中画面をじっと見ています。A課長の仕事は回覧での電子書面の確認と決済がほとんどで、昼休みやトイレ休憩以外、退社時間まで席を離れることは滅多にありません。
毎週月曜日の午後は管理職会議に出席することになっていますが、ここ1年間は「緊急の仕事があるから」などの理由をつけて出席せず、代わりに課長代理のBさんが出席しています。その他本来課長がするべき対外的な交渉や部下の業務管理、指導などもBさんに丸投げ。課内ミーティングの司会進行役は1カ月交代で各部署の主任に振り分けています。
A課長はミーティングに参加しても、自分の意見を述べることはほとんどなく、最後は「君たちに任せた」で終わってしまいます。課員たちは仕事をしていないように見えるA課長の態度にあきれていますが、その分Bさんや主任たちがフォローをしているので、今まで職場内の問題が発生することはありませんでした。
2月中旬の昼前、Bさんが忌引きで会社を休んでいたので、ミーティング進行役であるC主任は、A課長に承認を求めました。
C主任: 課長、明日のミーティングの議題と添付資料の確認をお願いします。
A課長: それはBさんに見てもらってよ。いつもそうしてるでしょ?
C主任: B代理は明日まで休暇です。
A課長: あ、そう。じゃあ後で確認するからそこに置いといて。
C主任はA課長の机の上に資料を置き、ふとPCに目をやると、画面には複数のトランプの絵が。どうやらA課長は自分の仕事の合間にゲームを楽しんでいるようです。
C主任: 自分は昼休み後所用で外出し今日は戻ってきません。ミーティングは明日の9時10分からなので、すみませんがすぐに確認してもらえませんか?
A課長: 今、忙しいんだよ。
C主任: 忙しいって、ゲームの途中じゃないですか!
A課長: そんなに大声を出すなよ。やればいいんでしょ、やれば。後で持っていくから席に戻りなさい。
30分後、A課長はC主任から預かった書類を返しにきました。確認すると訂正箇所は一つもありません。
C主任: B代理にチェックしてもらうと、毎回いくつかの訂正や追加事項を指摘されますが、今回はゼロでいいですか?
A課長: はあ……。そうだね。それでいいよ。それで。
そして足早にその場を離れました。
C主任: どうせゲームに夢中になって、内容の確認なんかしていないだろう。まったく仕事をしない課長にはあきれたよ。
日本企業の場合、管理職にプレイングマネジャー(個人の担当業務と管理職の業務を両方担うこと)としての役割を求めることが多い傾向があります。しかし本来管理職の職務は、自らが管轄する部署内の業務を部下に割り振り、その仕事の管理と指導を行い、結果に責任を持つことと、部下の育成がメインになります。
働かない管理職といえば、仕事をせずにサボってばかりいる管理職を連想する場合が多いでしょう。しかし、特に上級管理職の場合、自らが動かなくても部署全体の業務が順調に流れ、成果が上がっていれば管理職としての任務を果たしている場合もあり、一概に「働いていない」とはいえません。
事例のA課長は、部署全体の業務進行には一見問題がなくても、本来自分がやるべき対外交渉や部下の管理、指導はほとんどBさんに丸投げし、部署内ミーティングでも意見を出すなどして部下の育成を行っている形跡がありません。回覧書類の内容を把握し、決裁印を押すことも職務の一つではありますが、それだけでは職務を全うしているとはいえず、働かない管理職である可能性が高いでしょう。
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