2015年7月27日以前の記事
検索
連載

日本のスタバは、なぜ「絶好調」なのか 米国本社が不調なのに、成長を続けられているワケ(5/5 ページ)

カフェチェーンとして人気のスターバックス。国内では店舗数を順調に拡大し、業績も好調な一方で世界に視野を広げると、実は近年不調にあえいでいる。なぜ、日本のスタバだけが好調なのか。

Share
Tweet
LINE
Hatena
-
前のページへ |       

「ミッション経営」に何より忠実なのが日本だ

 ここまで3つの戦略に触れましたが、国内スターバックスの店舗力向上を支える一番の要素は、ミッション経営の徹底にあります。

 米スターバックスは「中興の祖」と呼ばれる元CEOハワード・シュルツ氏が経営者となって以降、ミッション経営を実践してきました。日本のスターバックスも、その姿勢を忠実に守り、むしろ米国本社以上に徹底しているからこそ、成長していると筆者は考えています。

 スターバックスのミッションは「この一杯から広がる、心かよわせる瞬間、それぞれのコミュニティとともに― 人と人とのつながりが生みだす無限の可能性を信じ、育みます」というもの。1990年の策定以降、表現は異なるものの同じようなニュアンスのミッションを現場に伝え続けています。

 筆者がシアトル本社に行った際も、幹部社員はまずミッションを語ってくれました。このミッションがスターバックスでは商品開発、店舗開発、サービス開発などの軸になっています。

 日本のスターバックスでも、従業員に対して徹底的に教育しています。コーヒー豆やブランド教育に約40時間をかけているというのだから驚きです。もちろん姿勢だけでなく、現場で実行に移し、商品や店舗に生かすところまでこだわっているのが、国内スターバックス好調の一番の理由だと考えています。

 筆者は米国はもちろん、欧州やアジア各国に行っても、必ずスタバを利用します。その中で、多彩なメニューかつ最大限のサービスで、かつスピーディーに対応してくれるのは日本が一番だと感じます。日本のスターバックスこそが、ミッションにある「コミュニティ」なのではないかと感じています。


米国にある、スターバックス1号店(筆者撮影)

 スターバックス全社は、2025年度第1四半期決算で売り上げがほぼ横ばいでしたが、営業利益率の低下や既存店売上高の減少などがあり、特に北米では店舗力や商品力の課題があらためて問題視されています。

 反対に好調な国内スターバックスの店舗数は今や2000店に達し、2026年には創業30年を迎えます。日本の成功モデルを、今後世界中のスターバックスに注入できるかどうかが、同社の目指すミッション経営を徹底する一番の近道なのではないかと思います。

 今後、世界のスタバがどのような戦略をとっていくのか、注目しましょう。

著者プロフィール

岩崎 剛幸(いわさき たけゆき)

ムガマエ株式会社 代表取締役社長/経営コンサルタント

1969年、静岡市生まれ。船井総合研究所にて28年間、上席コンサルタントとして従事したのち、同社創業。流通小売・サービス業界のコンサルティングのスペシャリスト。「面白い会社をつくる」をコンセプトに各業界でNo.1の成長率を誇る新業態店や専門店を数多く輩出させている。街歩きと店舗視察による消費トレンド分析と予測に定評があり、最近ではテレビ、ラジオ、新聞、雑誌でのコメンテーターとしての出演も数多い。直近では著書『図解入門業界研究 最新 アパレル業界の動向とカラクリがよ〜くわかる本[第5版]』を刊行した。

岩崎剛幸の変転自在の仕事術


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

前のページへ |       
ページトップに戻る