絶好調「オーケー」を倒せるか トライアル&西友タッグが秘めている巨大な可能性:長浜淳之介のトレンドアンテナ(3/5 ページ)
小売業界再編のきっかけにもなりそうだった「西友」の売却先がトライアルHDに決まり、大きな話題となった。スーパーとしては「新参」であるトライアルだが西友との相性は良さそうだ。流通業界に詳しい筆者が、その可能性を解説する。
なぜ「価格破壊」できるのか
それにしても、なぜ「EDLP(エブリデイ・ロー・プライス)」を貫けるのか。
理由の一つは、グループ会社にMLSという物流の会社を有しているからだ。全国に常温、チルド、フローズンの倉庫を配置し、メーカーから集荷した商品を仕分けして、店舗に直接輸送するシステムを構築している。これにより、卸売業者の中間マージンが発生しないから、安く販売できる。
もう一つは、明治屋という総菜・弁当の会社を有していること。さまざまな分野の料理人や職人が40〜50人在籍してメニューを考案しており、製造も自ら行うので、安い。
加えて、トライアルの前身は1984年よりPOSシステムなど流通業向けソフトウエア開発やPCの販売を行っていて、IT系の会社だった。そのため、自社開発したITによる業務効率化、DX(デジタル・トランスフォーメーション)に長けている。
スーパーに進出したのは1992年だ。その後、米国で流行していたウォルマートのような衣食住すべてをワンフロアーで展開する業態を目指し、1996年には北九州市で「スーパーセンター トライアル」1号店をオープンしている。
トライアルのIT活用は多岐にわたる。中でもAIカメラによる店舗監視システムが面白い。カメラで店を見張るというと万引き防止が思い浮かぶが、トライアルの活用法はそこにとどまらない。AIカメラを使って陳列棚の状況をチェックし、店員が見回らなくても欠品を回避する仕組みだ。商品ごとの売れ行きを把握して、棚割の最適化をも実現できる。
カートにタブレットを取り付けた「スキップカート」も1月時点で240店以上に導入している。商品のバーコードを読み込む機能があり、クーポンの対象商品ならば画面に表示されたクーポンを使える。バーコードを通した合計金額も表示するので、予算に合わせた買い物も可能だ。あらかじめチャージしたプリペイドカードとセットで使うので、専用ゲートにて簡便に決済ができる。長いレジ列に並ばなくて済む。
このように、リアルとバーチャルの両面で、無駄なコストやストレスを解消しているから、EDLPを貫けるのだ。
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