入場料1万円超えは当然 ディズニーやUSJの止まらない値上げが、「消耗戦」を招くワケ(4/5 ページ)
次々と値上げとなる遊園地の入場券。値上げにより、入場者数が減って来園者が快適に過ごせるというメリットもあるようだが、果たして来園者はそれをきちんと享受できているのか……。
値上げによるデメリットは?
一方、値上げによるデメリットの1つが「長期的なファン形成が難しくなる」ことだろう。TDRがすでにそうなっているように、チケットの値段が上昇することは、若年層の来園者が減ることにつながる。
TDRを運営するオリエンタルランドのファクトブックによれば、2019年3月には21.2%だった大人(40歳以上)の割合が2024年3月には33.2%と急増。一方で、大人(18〜39歳)の割合は同期間で50.7%から41.0%と減少。中人(12〜17歳)はほぼ横ばいだが、小人(4〜11歳)も15.2%から13.4%と減少している。大人(18〜39歳)の範囲が幅広いため断定はできないが、若年層の減少と高齢者層の増加が起こっている。こうなってくると、将来的なファン層の形成が難しくなる可能性がある。
ただ、私がより注意すべきだと考えるのは、値上げをすることによって「期待値と現実のズレが起こる」ことだ。値上げによって特別感を高めるほど、実際にテーマパークを体験したときに消費者が「期待外れだった」と思う可能性も高くなってしまうのだ。
マーケティング&ブランディングディレクターである橋本之克氏の記事によると、テーマパークの待ち時間表示は実際よりも長く書かれているそうだ。これにより、表示よりも少ない待ち時間でアトラクションに乗れた消費者の満足感は高くなる。最初に見た待ち時間が頭に強く残っているため、どこか得した気分になるのだ。結果として長時間の列でもクレームが出づらいのだという。
基準となる数値をどこに置くかで人の満足度が変わるということだが、これは値段でも同じだろう。入場券にある程度高い料金を払うと、期待値は否応なしに上がる。すると、テーマパーク側としては常にその期待に応え続けなければならないという、ある種消耗戦にも近い戦いを強いられてしまうのだ。
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