USJ社長は社員に「Who are you?」と何度も聞く──その真意は?(2/2 ページ)
チームメンバーの強みを、あなたはすぐに言えるだろうか。USJのV字回復期を支える人材育成を担った梅原千草氏は、自分の強みを認識しメンバーの強みを理解することが、チームの連携につながると言う。梅原氏が執筆した『最高の自走型チームの作り方』より、チームリーダーとして自己理解と他者理解を深める方法について解説する。
メンバーの弱みではなく、強みに目を向ける
自己理解ができれば、次は、他者理解です。メンバーについても同様に、Will、Can、Mustのフレームワークで考えてみてください。
USJでは、このフレームワークをもとに開発したキャリアシートを使って、1年に1回、自分自身を振り返り、自己理解を深め、未来に向けて考える機会を作っていました。私がキャリアシートを開発する際に大事にしていたのは、自分の強みを認識し、どこでどう生かすかを考えてもらうことです。
組織は、働く人の強みを生かすことが大事です。人を採用するとき、担当者は弱みではなく、強みを評価し、職場にいい影響を与えてくれるかどうか、役割を担えるかどうか、結果を出すかどうかをみているはずです。
ところが入社後は、自分も周囲も弱みや課題を改善することへ目を向けがちです。人は足りない部分に目がいくからです。もちろん、周囲に悪影響を与えている状況は改善する必要があります。ただ、それは強みを生かすことで補えないのか、強みを増やすという視点でアドバイスし合えないかと考えることが必要ではないでしょうか。
リーダーがチームを作るときは、強みを生かす視点で役割分担を考え、強みを生かし合い、弱みを補い合える組み合わせで連携させることです。
そのためには、リーダーが、メンバーそれぞれの強みを把握することが必要です。
まずはメンバー本人に強みを書き出してもらいましょう。リーダーは、普段からメンバーを観察し、他者目線で強みを書き出します。それを共有し、どの強みを生かしたいのか、増やしたい強みはあるのか、それはなぜなのかと問いかけ、メンバー自身のモチベーションの源泉となることを探ります。
リーダーがメンバーのWillやCanを理解できていれば、メンバーに期待していることや、メンバーが果たすべき役割を伝えるときに、「あなたの〇〇という強みを生かしてほしい」「あなたが高めたいと言っていた〇〇を経験できる機会になる」というように、モチベーションに配慮した伝え方ができます。
例えば、来年の新人育成を担当してほしいと伝えるときに、「年齢が一番近いから」という理由ではなく、「〇〇さんの周囲への気遣いや仕事の正確さを見ていて、この役割を任せたいと思いました。先日の営業先訪問のときも、メンバーのことをフォローしていましたよね。新人に教えることは、自分の仕事の振り返りもでき、業務改善への気付きも得られるから、以前、課題だと言っていた作業効率を高めることにもつながりますよ」と伝えることができます。どちらの言い方が、メンバーが役割に対して前向きな姿勢になるかは、明白です。
メンバーとのよりよい関係構築に役立つ「〇〇さんプロファイル」
私はメンバー一人ひとりを知り、理解するために「〇〇さんプロファイル」を作っていました。
1枚目には、前職情報、異動や昇降格、評価履歴といった基本情報と会話の中で得た家族構成、趣味などのプライベート情報を事実情報として記載します。
2枚目は、Will、Canです。Canは前述した本人が自覚している強みと私が思っている強みを描き、私が思う強みは、気付いたときに追加していきます。そのときは、具体的にどういう場面で何があったから強みだと考えたのかも記載します。
3枚目は仕事や面談記録です。仕事は、担当している仕事とその結果、プロセスでよかった点や気になった点です。そして、評価面談などの度に、どのような対話になったか、相手の反応はどうだったか、どんなフォローが必要だと感じたかなどを書き溜めていきます。
このプロファイルは作成するのが大変そうだと思われますが、最初に基本情報さえ記載すればあとは都度足していくため、1回1回に時間がかかりません。相手の情報が必要なときに思い出す作業をするよりも、断然効率がいいと思います。
メンバーの情報を集め、自分の意見や感想も記録しておくことで、メンバーとの接し方を工夫することにつながります。仕事の役割分担を決めるときや、新たな役割を依頼するとき、昇降格や異動など環境変化を伝えるとき、アドバイスや指摘をするときには、プロファイルを見ながら情報を確認し、少しでも効果的に伝えるにはどうすればいいかと考える助けになっていました。
人を相手にすることなので正解はありませんが、相手の情報をもとに自分の言動を工夫することで、いい結果が生まれる可能性は高まります。
メンバー同士が強みを生かし合うことができるチームを作るには、まずはリーダーがチームメンバー一人ひとりを理解し、強みを生かしてチームに貢献できる役割や連携を作り出すことが必要です。メンバーを知ることがチーム作りには欠かせません。
筆者プロフィール:梅原千草(うめはらちぐさ)
ユニバーサル・スタジオ・ジャパン事業会社に新入社員第1期生として入社。2010年に社内教育機関ユニバーサル・アカデミーを立ち上げ、初代学長としてV字回復期の人材育成に貢献。
2015年に独立。株式会社SmiLearnを設立し、自走する個人、自走するチーム作りを支援すべく、人材開発コンサルタント及び研修・講演講師として活動中。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
USJが実践 業務時間内に他部署とコミュニケーションする、ユニークな取り組みとは?
あなたやチームのメンバーは、チーム外の他者と関わることはどれくらいあるだろうか。USJでは、初対面同士の6人で昼食を取る取り組みが、「横のつながり」をつくり、組織の潤滑油になっているという。USJのV字回復期を支える人材育成を担った梅原千草氏が執筆した『最高の自走型チームの作り方』より、USJが実践するUni-Gohanの取り組みを紹介し、リーダーがとるべきコミュニケーションへの姿勢について解説する。
USJをV字回復に導いた4つの思考軸 状況が好転する、物事の「捉え方」
チームメンバーが自ら考え、行動するにはどうすればいいのだろうか。テーマパークのUSJは、「We are USJ」という4つの思考軸を使って自走するチームをつくり、困難な状況からV字回復を果たした。USJで人材育成に貢献した梅原千草氏が執筆した『最高の自走型チームの作り方』より、「We are USJ」とはどのような思考法か、そして実践するとチームにどのような効果があるのか解説する。
USJの「思わず笑顔になる」褒め合い文化に学ぶ ポジティブなチームの作り方
人間は放っておくと、本能的にネガティブな側面に目を向けがちだという。チームメンバーをポジティブに導くには、どうすればいいのでしょうか。USJのV字回復期を支える人材育成を担い、『最高の自走型チームの作り方』を執筆した梅原千草氏が、自己肯定感を高める3つの方法と、USJが実践する、メンバーにポジティブ感情を抱かせる「Hand IN Hand」という取り組みについて解説する。
