消費税10%時代は終わるのか 減税論が企業戦略に与える波紋:スピン経済の歩き方(1/5 ページ)
「減税になったらウチにとってもビジネスチャンスになるのでは」――。そんな風に期待を寄せるビジネスパーソンも多いかもしれないが、実態は……。
スピン経済の歩き方:
日本ではあまり馴染みがないが、海外では政治家や企業が自分に有利な情報操作を行うことを「スピンコントロール」と呼ぶ。企業戦略には実はこの「スピン」という視点が欠かすことができない。
本連載では、私たちが普段何気なく接している経済情報、企業のプロモーション、PRにいったいどのような狙いがあり、緻密な戦略があるのかという「スピン」をひも解いていきたい。
「減税になったらうちにとっても大きなビジネスチャンスになるのでは」。そんな風に期待を寄せるビジネスパーソンも多いのではないか。
国民民主党は政府に「消費税率一律5%に引き下げ」を要請。立憲民主党も枝野幸男元代表が「無責任なポピュリズム」と批判していたが、党内で食料品の消費税を「ゼロ」にすべきとの声が挙がっている。これを受けて、自民党・公明党も「減税」を政府に求めていく方向だという。
追い風になっているのが「トランプ関税」だ。米国が日本に相互関税をかけようとしているのは、消費税を非関税障壁と見なして廃止を求めているからだ――。という一部の見立てが独り歩きし、トランプ大統領が日本に対して「消費税、米の関税、ガソリン税、自動車重量税をやめれば、相互関税をやめてやる」などと要求した内容の“まとめサイト”が拡散された。その結果、トランプ大統領を「救世主」として崇(あが)める人も現れた。
一方で、この消費税減税の動きを「無責任」として批判している人もいる。MMT(現代貨幣理論※)が世界的に否定されている今、財源のない日本が消費税減税に踏み切れば、1317兆6365億円(2024年度末時点)という「国の借金」はさらに膨れ上がる。これを決める政治家の多くはあと10年、20年もすれば鬼籍に入る。一方、これから生まれる子どもたちは、この先何十年もこれらの借金を背負って生きていかねばならない。2050年には人口1億人を切る国で、それはさすがに酷ではないかというわけだ。
もちろん、「ザイム真理教」(※)を批判している人々からすると、こういう話自体が「洗脳」であり、日本の借金は「ゼロ」だ。そのため消費税増税を否定的に述べている政治家や経済評論家は「増税派」「ザイム真理教の信者」と厳しく批判され、SNSでは「増税議員には投票するな!」と早くも落選運動がスタートしている。
「財務省解体で全て解決」を熱心に信じているという意味では実は彼らも「信仰」に近い。そういう意味では夏の参院選を前に、「ザイム真理教VS. 減税信者」の全面衝突が早くも始まった形なのだ。
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