なぜ旅館は「1泊2食付き」を続けるのか 観光地の夜が静まり返る本当の理由:スピン経済の歩き方(6/6 ページ)
「1泊2食付き」から「朝食のみ」や「素泊まり」へと転換する事業者が増えている。日本の観光ビジネスにとって良い兆しだが、なぜかというと……。
「泊食分離」が進む
これまで紹介したように、昭和の宿泊業は「客側のニーズ」よりも「宿側の都合」が優先される傾向があった。朝食も夕食も全て宿が決めて、門限や風呂に入れる時間も決められている。客はあくまで宿側のルールに従って滞在を楽しませていただく、というスタイルだ。
しかし、時代は変わった。10人の観光客がいれば10通りの楽しみ方があるように、国や人種、世代によってホテルや宿での過ごし方、旅先で何を食べるのかというニーズも多様になっている。観光業界としても昭和のビジネスモデルから転換しなくてはいけない。
「1泊2食付き」を見直す宿が増えていると聞いて「寂しい」と感じる人もいるだろうが、実は逆で観光業界にとって明るい兆しだ。「泊食分離」は日本の旅館が長く苦手だった「客のニーズに耳を傾けて真摯(しんし)に対応する」ことに、いよいよ本気で向き合い始めたからだ。
江戸時代の商習慣を引きずっているということは、裏を返せば、日本の旅館はまだまだ成長の「伸び代」があるということでもあるのだ。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。窪田順生のYouTube『地下メンタリーチャンネル』
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受
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