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米中の“チキンレース”にTikTokも参戦? 関税ゲームの行方を読む世界を読み解くニュース・サロン(5/5 ページ)

米国のトランプ関税が世界を揺るがす中、特に中国への打撃は大きい。米国にあおられるままに報復関税をかけ、互いに高い関税を課す事態に。中国は欧米製品を標的とした情報工作まで実施している。日本への影響も避けられない状況だ。

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日本も火の粉をよけられない

 最後に、1980年代にケ小平の英語通訳を務め、現在は北京を拠点とする「中国とグローバリゼーションセンター」副会長で、自らを「中国共産党の広報担当者」と呼ぶ中国専門家、ビクター・ガオ氏のコメントに耳を傾けてみよう。

 「中国は関税に断固として毅然とした態度を取り、トランプ政権による圧力や脅迫に決して屈することはない」

 「世界は広大であり、米国が世界の市場全体ではないため、中国は最後まで戦う覚悟ができている」

 「米国が中国に対する姿勢を変え、中国をありのままに扱い、中国と中国国民に敬意を示し、中国や世界に対する偏見や偏った見方を押し付けようとしなければ、米中対話は実現するだろう。米国が仕掛ける関税戦争や貿易戦争を、米国と中国がともに是正するための抜本的な対策を講じなければ、景気後退に陥るだろう」


米中の対立が長期化すると、日本は……(画像提供:ゲッティイメージズ)

 この問題が長期化すれば、米国と中国のどちらとも経済面で深くつながっている日本も、間違いなく返り血を浴びることになるだろう。

 というのも、中国が米国に売れない製品は他の国で売るしかなく、さらに安い価格で他国に流通する可能性があるからだ。実は、その兆候はすでにある。

 4月22日付の朝日新聞では「中国の自動車大手BYDが、日本で軽自動車の電気自動車(EV)を発売する方向で検討していることが22日、分かった。同社関係者が明らかにした。2026年の発売を目指しており、価格は日本の軽EVの価格を目安に、250万円程度を見込む」と報じている。米国や欧州のEVに対する関税を見越して、日本に流れていると考えていい。

 とにかく、米中の争いは日本にとっても対岸の火事ではない。日本がその火の粉をよける術はほとんどないのが実情だ。どちらにもいい顔をしてばかりも、いられないかもしれない。

筆者プロフィール:

山田敏弘

 ジャーナリスト、研究者。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフェローを経てフリーに。

 国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『プーチンと習近平 独裁者のサイバー戦争』(文春新書)、『死体格差 異状死17万人の衝撃』(新潮社)、『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)、『サイバー戦争の今』(KKベストセラーズ)、『世界のスパイから喰いモノにされる日本 MI6、CIAの厳秘インテリジェンス』(講談社+α新書)がある。

Twitter: @yamadajour、公式YouTube「SPYチャンネル


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