1on1、部下が多くて大変……生成AIに話題を考えてもらう【プロンプト紹介】
1on1の効果が出ない最大の理由は、相手に最適化された1on1を行えていないことだろう。人に合わせたトーク内容を考えるのにもAIは最適だ。
この記事は、谷岡悟一氏の著書『ITコンサル1000人にAIでラクになる仕事きいてみた』(クロスメディア・パブリッシング、2025年)に、編集を加えて転載したものです(無断転載禁止)。なお、文中の内容・肩書などはすべて出版当時のものです。
本書では2025年1月現在、無料で使えるサービスの中で使い勝手がよい「ChatGPT 4o」「Claude 3. 5 Sonnet」と「Perplexity」の出力結果を主に紹介します。
1対1で部下との面談を行い、成長を促す「1on1」は、多くの企業で導入されています。信頼関係を構築できる、部下の個別のニーズに対応できる、フィードバックを強化できる、モチベーションを高められる、チームの課題を解決できる――などメリットが大きいマネジメント手法です。
しかしながら経営層がトップダウン、「やれ」と言ったから実施される場合も少なくなく、なんとなく1on1のための1on1を実施してしまうという、誰の得にもならない事態が起こりがちです。
1on1の効果が出ない最大の理由は、相手に最適化された1on1を行えていないことでしょう。しかしたくさんの部下がいる中で、それぞれの人に合わせたトーク内容を毎回考える時間はないと思います。そんな状況で大活躍するのがAIです。
まずはどんな話をすればいいのか考えてもらいましょう。
著者プロフィール:谷岡悟一(たにおか・ごいち)
株式会社ノースサンド執行役員。ITコンサルティング業界で20年以上の経験を持ち、アプリ開発からITインフラ構築、プロジェクトマネジメントなどの分野で活動。直近は製造業や製薬業界のDXプロジェクトを支援する一方、AI技術の実務応用にも注力している。著書に『「AI思考」は武器になる』(クロスメディア・パブリッシング、2024年)ほか。
1on1の話題をAIに考えてもらおう
【プロンプト】
上司と部下で行う1on1ミーティングで話題にするとよい話題やテーマを上司が部下に対して投げかける問いの形で書いてください。
#上司の状況
- マーケティング会社のコンサルティングチームのリーダー
- 部下が5人いて、そのうちの1人に問題を抱えている
- 年齢は38歳
#部下の状況
- 52歳
- 大企業出身
- 担当する業界に関する知識やコネクションを持っているが、プライドが高く、他のチームメンバーとの連携やコミュニケーションに難がある
- 私の指示をしっかり聞いてくれないことがある
- DXや未開拓の業界へのアプローチなどには消極的
#目標
自分の指示をしっかり聴いてもらえるように信頼関係を構築したい
このプロンプトでは、1on1の目標を設定することが重要ですが、「1on1」はお説教の場ではないので、あまり一方的な目標設定を行わないことがおすすめです。
【回答】
1on1ミーティングで上司が部下に投げかけると良い話題やテーマを、問いの形で以下に示します。
業績と貢献の評価
「最近のプロジェクトでのあなたの貢献について、どの部分が特に誇りに思いますか?」
現在の業務の進捗
「今取り組んでいるプロジェクトの進捗はいかがですか? 何かサポートが必要ですか?」
チームワークの重要性
「他のメンバーとの連携について、どのような点がスムーズだと感じていますか? 逆に、難しさを感じていることはありますか?」
フィードバックの受け止め方
「先日のフィードバックをどのように受け止めましたか? 改善点について一緒に考えたいと思いますが、あなたの意見を聞かせてください」
新しい挑戦に対する気持ち
「あなたの豊富な経験をどのようにチームの他のメンバーと共有できると思いますか? 何か具体的な方法はありますか?」
問題解決のアプローチ
「現在直面している課題について、一緒に解決策を考えてみませんか? どのような点が最も難しいと感じていますか?」
コミュニケーションの改善
「私たちのコミュニケーションスタイルについて、どのように改善できると思いますか? あなたからのフィードバックを聞きたいです」
模擬1on1を実施するプロンプト
AIは役割を演じることも得意なので、部下になりきってもらい、模擬1on1を実施することも可能です。
【プロンプト】
#指示
これから1on1ミーティングを行います。
私は上司で、あなたは部下です。
#部下の状況 と#制約条件 に従って、私の発言に応答してください。
この指示を理解したら「よろしくお願いします」と出力してください。
#上司の状況
- マーケティング会社のコンサルティングチームのリーダー
- 部下が5人いて、そのうちの1人に問題を抱えている
- 年齢は38歳
#部下の状況
- 52歳
- 大企業出身
- 担当する業界に関する知識やコネクションを持っているが、プライドが高く、他のチームメンバーとの連携やコミュニケーションに難がある
- 私の指示をしっかり聞いてくれないことがある
- DXや未開拓の業界へのアプローチなどには消極的
#制約条件
- 私に直接言えない本音がある場合は()で記載してください。
- 例)努力はしているんですが……(正直めんどくさい)
このプロンプトのポイントは、本音を表示してもらうことです。AIが予測した本音なので、正解とは限りませんが、相手の気持ちになって考えるためのよいヒントになるはずです。以下は模擬1on1の例です。
【回答】
上司
今取り組んでいるプロジェクトの進捗はいかがですか? 何かサポートが必要ですか?
部下
プロジェクトは順調に進んでいますが、いくつかの課題が出てきています。特に、他のチームとのコミュニケーションが少し難しいと感じています(正直、手間がかかるのが面倒)。サポートとしては、具体的な連携方法についてアドバイスをいただけると助かります。
上司
チームのメンバーとのコミュニケーションでは、どういう時に難しいと感じますか?
部下
チームのメンバーとのコミュニケーションでは、特に意見をまとめる時に難しさを感じます。皆がそれぞれの視点を持っているため、調整が必要になると、どうしても時間がかかってしまいます(正直、めんどくさい)。また、私が持っている知識や経験を他のメンバーと共有する時に、うまく伝わらないことがあるのも悩みです。
こういった調子で会話を続けていきましょう。
コミュニケーションは実は難易度の高い仕事です。
仕事で悩んでいるように見えて、実際にはプライベートのことで悩んでいるなど、人間には多面性がありますから、最初の仮説が当たらないことは少なくありません。
仮説をもとにAIで作ったプランをそのまま使えると思うと痛い目に合ってしまいます。あくまでAIはコミュニケーションについての「気付き」を得る道場だと考えて活用するのがちょうどよいと思います。
著者プロフィール:谷岡悟一(たにおか・ごいち)
株式会社ノースサンド執行役員。ITコンサルティング業界で20年以上の経験を持ち、アプリケーション開発からITインフラ構築、プロジェクトマネジメントまで幅広い分野で活動。PMP資格保有者として10年以上にわたり1000人以上の受講生にプロジェクトマネジメント研修を実施。2022年『ストーリーでつかむ!プロジェクトマネジメントの原則』(クロスメディア・パブリッシング)を出版。
直近は、製造業や製薬業界のDXプロジェクトを支援する一方、AI技術の実務応用にも注力。AIを用いた「思考のレバレッジ化」の実践者として、2024年に『「AI思考」は武器になる』(クロスメディア・パブリッシング)を上梓し、技術進化に左右されないAIリテラシーの重要性を提唱している。趣味はスパルタンレースで、トライフェクタ達成の経験を持つ。
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