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企業はスキルではなく「雰囲気」で採用している

「スキルベース採用」を掲げる企業は多いが、その実態は異なるようだ。

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HR Dive

 人材パフォーマンス分析サービスなどを提供する米Textioの調査によれば、内定を獲得した候補者は、不採用となった候補者と比べて「性格が良い」(great personality)と評価される可能性が12倍高いことが明らかになった。

企業が重視しているのは結局……?

 これは、採用決定において実際にはスキルや経験よりも、候補者の印象や人柄に対する主観的な評価が大きな影響を及ぼしていることを示しており、企業が掲げる「スキルベース採用」の理想と実態との間にギャップが存在することを浮き彫りにしている。

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企業は「スキルベース採用」をうたうが……(提供:ゲッティイメージズ)

「スキルベース採用」の掛け声と現実のギャップ

 4月29日に発表されたTextioの調査レポートによると、企業は「スキルベース採用」を掲げているものの、実際の採用現場では応募者のスキルや経験よりも、“好印象”や“直感”を重視して採用判断を下す傾向があることが明らかになった。

 Textioはこの傾向を「雰囲気採用」(vibe hiring)と表現しており、調査では内定を得た候補者は、採用されなかった人と比べて「性格が良い」と評価される可能性が12倍も高かったことが判明した。

記憶や直感に頼る採用は「ビジネス全体を危険にさらす」

 「あまりにも多くの採用チームが、面接の内容を“記憶”や“直感”、“会話体のメッセージ”に頼って把握しています。しかし残念ながら、記憶は薄れ、直感はしばしば不確かで、会話体のメッセージは採用向きのシステムではありません」。Textio共同創業者兼名誉チーフサイエンティスト、キアラン・スナイダー氏は、このように述べている。

 「構造化されたスキルベースの面接評価は、効果的な採用プロセスにおいて不可欠です。それを怠れば、採用成果、チームのパフォーマンス、ひいてはビジネス全体がリスクにさらされます」

 Textioが1万件以上の面接評価を分析したところによると、内定を受けた候補者は、

  • 不採用者に比べて「フレンドリー」と表現される可能性が5倍
  • 「エネルギッシュ」と評価される可能性が4倍高かった

という。

 つまり、実際の採用判断はスキルではなく、候補者の人柄や雰囲気といった主観的要素に大きく影響されていることが裏付けられている。

面接評価における性別バイアスが浮き彫りに──Textio調査が示す言語の違い

 Textioのレポートによると、面接評価における評価記述には、男性と女性で顕著な違いがあることが明らかになった。

 女性候補者は、男性と比べて「陽気」(bubbly)と記述される割合が25倍、「感じが良い」(pleasant)が11倍多かった。

 一方で、男性は「冷静」(level-headed)とされる割合が7.5倍、「自信がある」(confident)は7倍多かった。

 これらの結果は、評価者が候補者の性別によって異なる性格的特徴を、意識的または無意識に強調している可能性を示唆しており、面接評価におけるジェンダーバイアスの存在を浮き彫りにしている。

 Textioのレポートによると、候補者が面接後にフィードバックを受け取ることはまれであるが、フィードバックを受けた候補者はその後のパフォーマンスが向上する傾向があることが分かった。

 さらに、内定を獲得した候補者の方が、面接に関するフィードバックを受けている割合が高いことも明らかになっている。

 また、従業員エンゲージメントの向上支援などを提供する米Gallupの調査では、候補者が企業を選ぶ際、「面接体験の質」が重要な判断材料になっていることが示されている。企業が優秀な人材に好印象を与えるには、次のような取り組みが効果的であるとされている。

  • 構造化された面接プロセスの実施
  • 候補者への敬意ある応対
  • 企業文化や、従業員にとっての価値を面接を通じて明確に伝えること

「インクルーシブな言葉づかい」が組織文化と定着率を高める

 米McLean & Companyの最新レポートによると、インクルーシブ(包括的)な言語を用いたコミュニケーションは、組織の価値観を強化し、従業員体験を向上させ、離職率の低下にも寄与することが明らかになった。

 一方で、インクルーシブな言語を軽視すると「所属感を重視しない組織」であるという誤ったメッセージを与えてしまう可能性があると警告している。

採用活動にもインクルーシブな表現を

 米IT企業VMwareのエグゼクティブは、求人票にもインクルーシブな表現を積極的に取り入れることが、より多様な人材の応募を促進する鍵だと述べている。

 その一環として、以下のような工夫が推奨されている。

  • 主観的な表現やあいまいな資格要件の削除
  • 「必須スキル」と「歓迎条件」の明確な区別
  • 性別、年齢、国籍、障がいなどに関する無意識バイアスを排除した文言への見直し

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