部下に「指示」するだけでは不十分 これからの上司が習得すべき「対話のスタイル」とは?
マネージャーにとって、部下とのコミュニケーションの取り方は、対話の良し悪しに大きな影響を与えます。取り扱う課題に応じて、上司と部下のコミュニケーションスタイルを使い分けるポイントを解説します。
この記事は『わたしたちのエンゲージメント実践書』(株式会社アトラエ Wevoxチーム著、田中信著、日本能率協会マネジメントセンター)に掲載された内容に、編集を加えて転載したものです(無断転載禁止)。
「上司と部下」のコミュニケーションスタイルを使い分ける
多くの場面で、職場での対話をリードすることになるマネージャーにとって、部下とのコミュニケーションの取り方は、対話の良し悪しに大きな影響を与えます。取り扱う課題に応じて、上司と部下のコミュニケーションスタイルを使い分けるポイントを解説します。
3つのコミュニケーションスタイル
組織における上司と部下のコミュニケーションは、次の図で示すように「指示型」「問いかけ型」「協創型」の3つのスタイルで考えることができます。
ビジネスシーンにおいては、指示型でのコミュニケーションが最も用いられます。上司から部下へ指示を出すコミュニケーションは、職場では当たり前の光景と言ってもいいでしょう。
しかし、今日の組織が直面する「正解のない課題」に対して、こうした指示型のコミュニケーションでは対応できないことも多々でてきました。
というのも、指示型のコミュニケーションは、上司が正解を持っていることが前提となってきます。上司が持っている正解に沿って、部下に的確に指示を出す事柄においては、機能するコミュニケーションスタイルと言えます。
しかし、変化の時代と言われる今日において、組織が直面する課題は、誰も正解が分からないケースが増えてきています。
こうした課題に対して解を見つけていくために、問いかけ型、協創型のコミュニケーションスタイルを活用していく必要があります。
従来のマネージャーには指示型が求められていた
しかし、いざ問いかけ型や協創型のコミュニケーションをしようとしても、多くのマネージャーは難しさを感じます。それは、これまでのビジネスシーンにおいては指示型のコミュニケーションが主流であり、慣れ親しんでいるためです。
そのため、頭では協創型や問いかけ型のコミュニケーションが大切だと、マネージャーに理解してもらったとしても、すぐには言動として現れるわけではない、簡単に切り替えができないことを ER(Engagement Runners、エンゲージメントを実践し、広げていく人たちを意味する造語)は理解しておくことが大切です。
切り替えが難しい背景には、慣れ親しんでいないこと以外に、従来の上司としてのあるべき姿にとらわれてしまっていることも考えられます。
例えば、「上司は正解を持っていて、的確に部下に指示しないといけない。そうしないと、次から部下が言うことを聞いてくれないのではないか」といった恐怖心を抱いているケースは多く見られます。
しかしながら、先述のように今の組織が抱える課題の多くは、正解がないものです。そうした中で、マネージャーはこれまで慣れ親しんだ指示型だけではなく、協創型や問いかけ型のコミュニケーションも習得していくことが求められていきます。
部下の側も、確実に指示できる上司を求める人だけでなく、上司と一緒に試行錯誤しながら打ち手を見い出すことを好む人もいます。
まずは問いかけ型から取り組んでみる
コミュニケーションスタイルの切り替えを目指すために、まずは問いかけ型に取り組んでみることをオススメします。
問いかけ型のコミュニケーションでは、上司からの問いかけをきっかけに、メンバー間の対話や、チームでの試行錯誤を生み、正解のない課題やテーマに対して、(その時点での)最適解を出していきます。
チームで考え、解を導いていくため、チームとしての成功体験を生むことにもなります。マネージャーが正解を持っていない課題に対しては、「部下も分からないだろう」というアンコンシャスバイアス(無意識の思い込み)が働きがちです。そうした思い込みを取り去り、「ピンチはチャンス」としてメンバーに問いかけをし、対話の機会づくりをしてみることをオススメします。
問いかけ型の先には、上司もメンバーの1人として対話に加わる協創型のコミュニケーションにもチャレンジしていきましょう。上司も加わった形での「生成的な対話」を行うことで、上司、部下の立場を越え、1つのチームとして課題と向き合えるようになっていくはずです。
ERは職場のマネージャーに対して、意識的にコミュニケーションスタイルを切り替えることを理解してもらうようにしましょう。その際に、マネージャーから「言いたいことは分かったけど、具体的にどうすればいいのか」といった声が挙がることが予測されます。
そうしたときは、ERが上司とメンバーがそろっているミーティングなどで、前出の図を用いて、上司と部下の間のコミュニケーションスタイルには3タイプあること、次いで場面に応じて3つのコミュニケーションスタイルの使い分けが大切だと共有することをオススメします。

