社員は本当に幸せだろうか――? 新潟の金属加工メーカーが挑んだ、エンゲージメントを高める方法(2/2 ページ)
新潟県燕市にある金属加工メーカー株式会社シンドー。従業員約90人、商品開発やOEM生産、材料販売などのモノづくりを中心事業としながら、理念経営に力を入れています。その一環として2022年10月にエンゲージメント活動をスタートした同社は「社員の幸せ」と向き合いながら、ボトムアップ型の組織づくりにチャレンジしています。
経営層へのアプローチと情報発信の強化
――フェーズ3では経営層からのアプローチを強化したとのことですが、具体的には何をしているのでしょうか?
エンゲージメントサーベイのコメントを、会長や社長を含めた経営層で集まって確認し、話し合い、その見解を全社員に公開しています。例えば、社員の提案がコストの増加を伴う場合、経営側が慎重になる一方で、現場は即効性を求める意見を主張するケースがあります。
このような対立に直面した際、役員は実際に現場を訪れ、直接現場の声を聞いて状況を確認しながら、次のステップを模索します。その結果、社員の要望がそのまま実現するケースもあれば、時期を改めることになるケースもあります。
この活動を開始して以降、「意見を出してもいいんだな」「ちゃんと聞いて動いてくれるんだな」と感じるようになったという声が社員から寄せられています。こうして社員の声に向き合うプロセスは、経営と現場の信頼関係を深めるとともに、自社らしさを基盤に「より良い状態」を目指す一歩を踏み出せたと感じています。
――表彰制度や社内報などについても詳しく教えてほしいです。
2024年4月から始まった表彰制度では、スコアの改善だけでなく、取り組みの姿勢が全社の模範となるかを基準に選定しています。ちなみに初の受賞部門は、最初はスコアが低かったものの、全社トップまで改善を遂げた部門でした。
社内報は、会社や同僚のことを「気になるな」「好きだな」と思ってもらえるよう、“社員がつながること”と、“自社らしさの探求”をキーワードに、『つながる ! シンドーマガジン』を立ち上げました。更新は月に1回です。
エンゲージメント活動は、「また何か始まった」といった一歩引いた雰囲気になってしまいがちです。どうすればもっと自然に全体を巻き込めるだろうか。その問いの中で出た意見が、先に挙げた2つのキーワードでした。
記事では、社員それぞれがシンドーで抱える業務に対する「熱意・活力・没頭」についてインタビューを行って作成しています。発信を通して、「皆さんの仕事に対する想いに心が動いた」というコメントや、「やりがいやこだわりに対し自身はどうなのかと改めて向き合えた」など、ありがたい反応をいただけるようになり、作成する私たち自身もやりがいを感じる取り組みになっています。
――エンゲージメント活動を通じた組織の変化はありますか?
エンゲージメントスコアは全体的に右肩上がりで、社員同士の対話や意識の変化が感じられます。スコアの向上よりも、互いが意見を交わしながら、より良い状態を目指していく過程で築かれていくものの方が重要だと考えています。
ここまでのスコアの向上は、社員一人一人が自己対峙や対話を通して、自己の役割やシンドーで働く意味を再認識し、互いに支え合いながら成長してきた結果だと感じています。
まだ道半ばではありますが、今後はさらにエンゲージメントを高め、一人一人が輝く会社を目指し、取り組みを進めていきます。この活動が社員の幸せと会社の未来をつなぐ重要な道だと信じ、一歩一歩進んでまいります。
