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企業は「社員に悩みを吐き出させることはできない」──では、どうすれば?

カナダのサイモンフレーザー大学の研究によれば、従業員が職場でメンタルヘルスの悩みを打ち明けるかどうかを左右する最大の要因は、具体的な制度や方針ではなく、「支援的な職場文化」であることが判明した。

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HR Dive

 カナダのサイモンフレーザー大学の研究によれば、従業員が職場でメンタルヘルスの悩みを打ち明けるかどうかを左右する最大の要因は、具体的な制度や方針ではなく、「支援的な職場文化」であることが判明した。

「職場文化」の重要性

 研究チームは、職場に支援的な雰囲気があると感じた人は、そうでない人に比べて55%も高い確率でメンタルヘルスの問題を雇用主に開示していることを明らかにし、「企業側には従業員の自己開示を促す手立てがほとんどない」とする従来の見解に異を唱えている。

 本研究の責任著者であり、同大学ビーディ・スクール・オブ・ビジネスの助教授を務めるジャンナ・リュビク氏は次のように述べている。「データが示したのは全く逆の結果です。企業には、従業員が自己開示しやすくなるよう働きかける余地が十分にあります。その大部分は『自己開示がどのように扱われるか』について従業員がどう感じるかにかかっており、それはまさに企業がコントロールできる領域なのです」

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(提供:ゲッティイメージズ)

 リュビク氏らの研究チームは、複数の調査に基づき、従業員のメンタルヘルスに関する開示意欲、実際の開示率、そして意思決定に影響を与える要因を分析した。さらに別の調査では、企業によるメンタルヘルスとウェルビーイング支援と欠勤率との関係についても検証を行っている。

 全体として、研究チームは以下の傾向を明らかにした。開示率の低さや企業への不信感は、欠勤や不安感の増加、生産性・業務パフォーマンスの低下と関連している。一方で、支援的な職場環境にある企業では、エンゲージメントや職務満足度が高く、離職率も低いといったポジティブな結果が見られた。

 リュビク氏は、従業員がメンタルヘルスの問題について職場でどの程度安心して話せるかを把握する手段として、職場アンケートの活用を推奨している。「これにより、企業は従業員の意識に関する明確なベンチマークを得られ、時間の経過とともにその変化を追跡することができる」と彼女は述べている。

 従業員の半数しか、自身のメンタルヘルス関連の福利厚生へのアクセス方法を把握していない――これは、全米精神疾患同盟(National Alliance on Mental Illness)とマーケティングリサーチの仏Ipsosが2024年1月に実施した調査の結果である。さらに、4人に1人以上の従業員は、そもそもそのような福利厚生が自分にあるかどうかも把握していないという。

 職場における「心理的安全性」に注目することも、有効な対策となる。米ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)の報告書によれば、心理的安全性が高まることで、従業員のモチベーション、幸福度、定着率が向上することが示されている。

 また、同報告書は、共感力のあるリーダーシップが心理的安全性を生み出し、その効果を職場にもたらす主要な推進力であると指摘している。

 人事担当者自身もまた、支援と励ましを必要としている――SHRM(米国人材マネジメント協会)の調査によると、4人に1人以上の人事担当者が、自分に与えられているメンタルヘルス福利厚生を「安心して利用できない」と感じていることが明らかになった。

 研究者らは、企業が掲げる「従業員のウェルビーイング」への関心と、実際に人事部門が職場で体験している現実との間にギャップが存在する可能性があると指摘している。

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