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企業は社員の「スキル」を適切に評価できていない

スキルに基づく採用(スキルベース採用)への関心が高まっているにもかかわらず、多くの企業はいまだに履歴書や職務経歴といった従来の指標に頼って人材を評価している。

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HR Dive

 スキルに基づく採用(スキルベース採用)への関心が高まっているにもかかわらず、多くの企業はいまだに履歴書や職務経歴といった従来の指標に頼って人材を評価している――人材評価プラットフォームを提供する米HireVueは、調査結果としてこう報告している。

かつてなく「スキル」が重視されているが……

 スキルを重視した採用の必要性がかつてないほど高まっているにもかかわらず、それを支える評価手法は十分に確立されていない。HireVueと米Aptitude Researchが5月1日に発表した共同調査レポートによると、自社のスキル評価手法に効果があると感じている企業はわずか12%にとどまっている。

 回答企業の半数は、スキルの検証に対してフラストレーションを感じていると答え、72%は依然として履歴書や自己申告によるスキル評価に依存している。さらに、現在のスキル評価アプローチに自信があると答えた企業は全体の26%にとどまった。

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(提供:ゲッティイメージズ)

 Aptitude Researchの創業者兼主席アナリストであるマデリン・ロラーノ氏は、レポートの中で次のように述べている。「スキルベース採用の緊急性はかつてないほど高まっている。しかし、スキルに関する議論そのものは、ここ数年ほとんど進展していない」

 「多くの企業にとって、スキルに関する取り組みは方向性を誤っており、戦略としても整合性を欠いている」と、ロラーノ氏は続けて指摘している。「その結果として、企業は“スキル”の扱いに迷い、スキルインベントリ(社内スキル一覧)の整備から始めるべきか、テクノロジーに投資すべきか、あるいは採用モデルを見直すべきかすら判断できない状態に陥っている」

 ロラーノ氏によれば、企業が陥りがちな問題のひとつは、実際に検証されたスキルではなく、履歴書や職歴、職位などに基づく「推定スキル」に頼りすぎている点である。これらの情報は状況を把握する上での参考にはなるが、必ずしもスキルの実証にはならないと彼女は述べている。

 一方で、実証済みのスキルは、構造化された評価、シミュレーション、AIを活用したスキルアセスメントなどを通じて、直接的かつ客観的に把握できる。

 レポートでは、企業がスキルベース採用に踏み切れない主な障害として、以下のような要因が挙げられている。

  • 採用担当者や経営層による変化への抵抗
  • 技術的制約やシステム面での未整備
  • 「スキルとは何か」に対する社内の共通認識の欠如
  • スキルベースアプローチの投資対効果(ROI)を測定できないこと
  • コンプライアンスや法的リスクへの懸念

 レポートによると、多くの企業ではスキル検証の効果を測定する仕組みが整っておらず、採用の効率性、業務パフォーマンス、社員の定着率、バイアスの軽減といった成果指標との関連性を追跡している企業は少数にとどまっている。

 一方で、スキルの可視化やスキルベースの報酬制度といった、人材戦略を支えるためのインフラを整備しはじめる企業も増えている。米Mercerの調査によれば、こうしたスキルベースの戦略は人材ギャップの解消に寄与し、経営陣の巻き込みを促す効果もあるという。

 また、米Workdayの最新レポートでは、AIによる人材構成への影響を懸念し、スキルファーストの採用へ移行する企業が増えていると報告されている。経営者の約半数が「将来的な人材不足」を懸念している一方で、自社が「長期的な成功に必要なスキルを有している」と自信を持って答えたのは3分の1未満にとどまった。

 こうした課題に対応するため、米国の代表的企業のCEOの連合であるthe Business Roundtableは、スキルベース採用の導入を支援する3つの実践ツールを公開している。これらのガイドには、米Accentureや米Bank of Americaなど大手企業の事例が盛り込まれており、職務要件の見直し、マネジャーの育成、関係者への効果的な伝達方法などが具体的に解説されている。

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