ISO認証を続けるべきか、やめるべきか……継続の課題とは
近年、多くの企業が取得している「ISO認証」。企業は「ISO認証」にどのような効果を期待しているのか。NSSスマートコンサルティング(東京都新宿区)が調査を実施した。
企業は「ISO認証」にどのような効果を期待しているのか。国際標準化機構がさまざまな分野において設けているISO認証について、NSSスマートコンサルティング(東京都新宿区)が調査した。
ISO認証「継続の課題」とは
現在取得しているISO規格については「ISO9001」(品質)が最も多い回答となり、68.3%に上った。以降は「ISO14001」(環境)の55.7%、「ISO27001」(情報セキュリティ)の37.3%と続いた。ISO認証を返上済みの企業においても、「ISO9001」(品質)が最も多かった。
ISO認証を取得している企業の取得目的については「企業の信頼性向上」が最も多く、64.3%。その他「取引先・顧客からの要請」(42.9%)、「社内体制の整備・強化」(39.0%)が上位となった。
ISO認証を取得して、効果があったと感じる領域とは。最も多い回答は「顧客からの信頼獲得」で51.0%に上った。以降は「社内の業務改善・効率化」(35.4%)、「事業運営上のリスク低減」(27.8%)と続いた。
一方で、ISO認証返上済み企業はいずれの項目も、取得中企業より回答割合が低い傾向となった。特に「顧客からの信頼獲得」は、取得中の企業と比べて24.9ポイントも低い結果に。対外的な評価や内部の仕組みづくりにつなげられなかった企業が、返上を選択している可能性が考えられる。
回答者からは、「業務のほとんどを社内ルールに則り行うことで効率が上がり品質が安定した。ミスはほぼなくなった」(60代/女性/経営者・役員/ISO9001取得)といった意見が寄せられ、業務手順やルールの明確化・標準化が、業務効率や品質の向上、ミスやリスクの低減といった実務面での効果につながっていることがうかがえる。
ISO認証の継続運用における課題については、取得中企業・返上済み企業のいずれにおいても、「ISO維持のためだけの業務増加」「書類や記録などの管理の負担」「審査費用などのコスト」が上位となった。特に取得中の企業では、「ISO維持のためだけの業務増加」とした人が40.6%に達し、通常業務と並行して行う負担の大きさが明らかになった。
一方、返上済みの企業は、「コストの負担」が1位となり、37.9%に上った。ISO認証の定期審査と更新審査には数十万円かかるため、具体的な効果実感が少ない場合はコスト負担が返上の理由となっている可能性が考えられる。
ISO認証の継続年数については「取得から9年以上(3回以上の更新を完了)」が最も多く39.6%に上った。「取得から6年以上〜9年未満(2回目の更新を完了)」とした17.5%と合わせて、57.1%が2回以上更新していることから、長期的に運用することにメリットを実感している人が多いとうかがえる結果になった。また、ISO認証の維持に外部サポートを「活用している」とした人は62.5%に上った。
ISO認証の継続運用に向けた社内対策とは。「担当者向けの教育・研修の実施」(41.7%)、「担当者の固定・専任化」(40.6%)、「社内マニュアルやルールの定期的な見直し」(40.0%)が上位となった。
ISO認証の継続運用に関する判断において重視している要素については、「企業の信頼性やブランド力の維持」が最も多く37.7%。次に「取引先・顧客からの要請」「社内体制の維持・強化」(いずれも29.6%)が挙がった。
また、ISO認証を返上した場合の懸念についても、最も多かったのは「企業の信頼性やブランド力の低下」で、35.9%を占めた。ISO認証は企業価値や対外的な信用を支える重要な資産として位置付けられていることが明らかになった。
調査は5月13〜15日にインターネットで実施。企業のISO担当者・経営幹部・経営者1039人から回答を得た。
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