問題は「億ションの増殖」だけではない これから不動産業界に起こる「地殻変動」とは(6/6 ページ)
都心部で増殖する億ションを中心に、値上がりを続ける不動産。しかしこれから10年にかけて、さらなる大変化が起こりそうだ。
不動産企業に必要な心構え
(1)営業の短期化、施工の短期化、広告費最小モデルで低価格物件でも収益確保
(2)低価格で顧客目線の営業品質によって受注率向上・件数増加
(3)中価格で高品質・高対応:土地探し・設計・建築・セキュリティまでのトータルサポート
(4)単身、海外転入・転出、富裕層、気密性、医療連携など特化したセグメントで強みを確立
(5)中古マンション・空き家の再生力・活用力(リノベーション、古民家カフェ、民泊、オフィス活用、外国人向けサービスなど)
安くする代わり、営業活動も次から次へと数を打てばいいという考えでは失注だけが積み重なってしまいます。よって、(1)は確かに必要ですが自社都合によりすぎないよう注意が必要です。
そういう意味では(1)と(4)はセットになることが多いかもしれません。
(2)は各社が取り組んできたことかと思いますが、市場が飽和し競合性が高まると営業現場には焦りが生じ押し売りになりがちです。こういう市場だからこそ営業の一挙手一投足には細心の注意を払う必要があり、営業現場で見過ごされているミスを是正し、教育やノウハウを再構築しなくてはなりません。
(3)は自社の担当範囲のみに終始するのではなく、顧客にとっての全体最適を意識し、積極的に提案していく姿勢が求められます。事業ドメインの拡大を含めて検討する余地があるでしょう。(5)は今後増大する中古市場を効率的かつ高い品質を維持しながら世の中の循環のハブとなる役割を担うことを意味します。
今回は市場概況を中心に解説しましたが、次回はこれを踏まえて、営業現場で今起きていることを中心に、成功モデルと失注例を挙げながらお伝えしていきます。最後までお読みいただきありがとうございました。
著者プロフィール
佐久間俊一(さくま しゅんいち)
レノン株式会社 代表取締役 CEO
城北宣広株式会社(広告業)社外取締役
著書に「小売業DX成功と失敗」(同文館出版)などがある。
グローバル総合コンサルファームであるKPMGコンサルティングにて小売企業を担当するセクターのディレクターとして大手小売企業の制度改革、マーケティングシステム構築などDX領域のコンサルティングを多数経験。世界三大戦略コンサルファームとも言われている、ベイン・アンド・カンパニーにおいて2020年より小売業・消費財メーカー担当メンバーとして大手小売企業の戦略構築支援及びコロナ後の市場総括を手掛ける。2021年より上場会社インサイト(広告業)のCMO(Chief Marketing Officer)執行役員に就任。
2022年3月小売業と消費財メーカーの戦略とテクノロジーを専門にコンサルティングするレノン株式会社を設立。
2019年より1年半に渡って日経流通新聞にコーナーを持ち連載を担当するなど小売業には約20年間携わってきたことで高い専門性を有する。
日経MJフォーラム、KPMGフォーラムなど講演実績は累計100回以上。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
画像生成AI、不動産業務にどう活用できる? 物件画像のクオリティーアップも
住まい探しで物件画像は欠かせない情報だ。不動産ポータルサイトに掲載するためには、物件画像の撮影だけでなく編集、加工など追加操作が必要となる。不動産DXの推進において画像生成AIを活用する方法を探る。
契約にかかる時間「60→15分」に短縮も 不動産取引のデジタル化がもたらす効果とは?
三井不動産グループの賃貸管理会社、三井不動産レジデンシャルリース(東京都新宿区)は、イタンジが提供するクラウドサービス「電子契約くん」を導入。契約書の作成をオンライン上で完結でき、契約書類の郵送や、顧客の来店が不要となる。サービスの導入で、現場にはどのような効果が生まれているのか。
