出社義務付け、働きにくいオフィスを強いられる社員 命令だけでリモート続ける経営層(1/3 ページ)
米国政府が全職員の出社を一斉に再開させようとした際、その混乱ぶりはすぐに各メディアの見出しを飾った。しかし、その理由は抗議や反発ではなく、「Wi-Fiも照明もトイレットペーパーもないオフィス」が原因であった。
米国政府が全職員の出社を一斉に再開させようとした際、その混乱ぶりはすぐに各メディアの見出しを飾った。しかし、その理由は抗議や反発ではなく、「Wi-Fiも照明もトイレットペーパーもないオフィス」が原因であった。
この失敗に満ちた出社再開は、多くの企業の人事担当者にとっても身に覚えのある課題を浮き彫りにした。それは、出社を効果的かつ効率的に、さらには従業員にとって魅力的な選択肢とするにはどうすべきか、という問題である。
「オフィスは人間のために作られている」と、オフィスの稼働率を可視化するテクノロジー企業・Density社のCEO、アンドリュー・ファラ氏はHR Dive誌に語った。「しかし私たちは、人間がどのようにオフィスを使っているのか、ほとんど理解していない」(ファラ氏)
建築設計事務所のGensler(ジェンスラー)でグローバル・ワークプレイス・リサーチ部門のディレクターを務めるジャネット・ポーグ・マクラウリン氏は「職場環境において従業員が譲れない条件があるのは当然だ」と話す。しかし現実には、それすら満たされていない場合がある。「機能しない職場は、もはや“職場”ではない」(マクラウリン氏)
出社を義務付けたいときに始める「小さなこと」
出社を義務付ける場合、最初は「小さなこと」から始めるとよい。その「小さなこと」とは何か?
「例えば、入館用のIDカードのアクセスが機能しているかを確認することだ」とファラ氏。多くの人が同時にオフィスを使うことになるため、それに耐え得るインターネット環境も整えておく必要がある。
「職場の稼働状況を監査しなければならない」と話すのは、HRサービス企業G&A Partnersのチーフ・ピープル・オフィサー、ミシェル・マイクセル氏だ。それには、ドッキングステーション、十分なモニター、作業に必要なデスクスペースなど、従業員が求める全ての備品の確認が含まれる。
定期的に出社する従業員には、専用スペースを割り当てられる。「それ以外の従業員には、予約制の共有デスクや空いていればすぐ利用できる席などのスペースを用意しなければならない」とマイクセル氏は話す。
ファラ氏もこの点を強調する。「全員に席を割り当てるか、共有スペースをきちんと機能させる必要がある。そうしなければ、『出社を強制されているのに座る場所がない』という不満が生まれる」(ファラ氏)
また、若手社員や新卒社員の多くは、これが初めてのオフィス勤務である可能性もある。そのため、IDバッジの取得方法、PCやネット接続の準備方法すら知らないことがある。ファラ氏は「こうしたプロセスをあらかじめ整備しておく必要がある」と指摘する。
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