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米Amazon、Googleも出社回帰 なぜ、わざわざ脱リモートするのか?河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(1/3 ページ)

米Amazonがリモート勤務を原則廃止し、週5日出社に戻すと報道された。なぜ、リモートワークもできる世界的なIT企業がリアル出社に回帰しているのか。チームの生産性を向上させるには、どうしたらいいのだろうか。

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 米大手IT企業Amazon.comのアンディ・ジャシーCEOが、これまでの週2日だったリモート勤務を廃止し、2025年1月から原則週5日に戻すと、従業員に向けたメッセージで表明しました。


画像提供:ゲッティイメージズ

 コロナ禍で急速に広まったリモート勤務には、これまでも「コミュニーケーションが取れない」「生産性が下がった」「管理職がマネジメントしづらい」など否定的な意見が相次いでいました。

 米大手IT企業ではAppleやGoogle、Metaなども従業員へ週3日の出社を規定するなど、「基本は出社」に戻りつつあります。過去にはテスラのイーロン・マスクCEOが社員に「出社しない場合は、退職したとみなす」と発言し、大騒ぎになったこともありました。

 一方で、リモート勤務のプラス面を指摘する識者は決して少なくありません。働く人にとっても「痛勤地獄」の回避になりますし、「リモートの方が集中できる」という意見を、私自身、何度も聞いてきました。

 では、なぜ、Amazonは原則出社にするのか? なぜ、世界的大企業はリアル出社にこだわるのか? なぜ、効率性を重んじる米国で、対面が重視されるのか?

 答えはシンプルです。

リアル出社にこだわる大企業たち――いったいなぜ?

 それは、原点回帰を求めるトップたちが「人の可能性」を信じているからではないでしょうか。

 規則的な仕事はAIに任せ、「創造性」が求められる仕事は人に任せる。職場に出勤し、頭と体を使って成果を出す必要がある仕事についてる人こそが、仕事を失うことなく働き続けられる時代に突入したのです。

 ここでポイントになるのが「視線」です。リモート勤務では、会議やブレインストーミングをやる際、画面に映る相手の顔に視線は集中しがちです。

 この「視線の集中」が創造性の妨げになることを、スタンフォード大学経営大学院マーケティング学部のジョナサン・レバブ教授とコロンビア ビジネス スクール マーケティング学部のメラニー・ブルック助教授が実験で明らかにしました(参考:「Virtual communication curbs creative idea generation」2022年)。

 リモートと対面で視線の動きと脳の動きとの関連を検証したところ、相手に注意を払っていることを示すために画面に目を向け続けていると(=リモート)、アイデアを発想する役割を担う脳の機能にアクセスするのが難しくなることが確認されたそうです。

 そもそも人は、フェーストゥフェースでコミュニケーションをとることで、生き延びてきました。

 フェーストゥフェースのコミュニケーションでは、 視覚・聴覚・嗅覚・味覚などに訴える、文字で表現できない何百もの情報のやり取りが行われます。それらの無数の情報が、画期的なアイデアを生んできました。同時に、それは「時間と空間」を他者と共有することであり、時間をかけて話をすることで、信頼は形成されていきます。

 会社で求められるのは「チーム力」です。「1+1」を、2ではなく3、4、5……と増やせるようなチーム力を培うのに、信頼は不可欠です。経営とは「人の可能性を信じること」です。「人にしかできない仕事」を成し遂げるには、フェーストゥフェース=出社が必要だと言えるでしょう。

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