「転職は裏切り」と考えるザンネンな企業が、知るべき真実:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(1/4 ページ)
「お前はどこに行っても通用しない」「転職は裏切りだ」──会社を去ろうとする若手社員に、そんな言葉を投げかける企業がいまだに存在する。そうした時代遅れな企業が知らない「新入社員の3割が辞めてしまう理由」や、「成長企業できる企業の退職者との向き合い方」とは?
会社を出て行った人は、裏切り者なのか? はたまた、未来の戦力なのか?
先週、「転職」という個人の決断の顛末(てんまつ)が、SNSで話題になりました。
あるTwitterの投稿によれば、「新卒3年目の若手が会社を辞めたい」旨を上司に伝えたところ、上司から「今のお前はどこに行っても通用しない」と説教されたそうです。そこで若手は上司にこう言い返しました。
「3年も在籍して外で一切通用しない職場にこれ以上いたら本当に駄目になるので辞める決心がつきました」
この投稿は瞬く間に拡散され、「これってパワハラでしょ」「3年も雇って育てられないってこと?」「辞めてくれて上司は喜んでいるのでは?」などなど、賛否両論のコメントが書き込まれました。中には「引き止められるうちが花」と、昨今の希望退職という名のリストラへの理不尽をついたコメントも散見されました。
新卒3年目──。
この時期にあたる20代後半から30歳前後は、キャリアの初期のステージから中期の移行期。キャリアの準備段階を終え(=キャリア初期)、本物のトラックへのスターターピストルが鳴らされるのです(=キャリア中期)。
人生は「将来なりたいもの」を夢みる幼少期からスタート。多くの人は学生時代を謳歌したのち、就職活動を経て就職します。その後は40年もの歳月を働くことに費やし、さまざまなキャリアを経験し、やがてリタイアを迎え、終止符を打つ。
キャリア人生の、それぞれのステージを通過する際に遭遇する壁が、“節目ストレス”と呼ばれるものです。
キャリアの初期ステージから中期への移行期では、実際にキャリアを重ね、仕事と正面から向き合った結果、「本当に自分のやりたい仕事・自分に合った仕事は、いったい何なんだろう?」と、迷うようになる。節目ストレスを乗り越えるための対処が求められる時期と言い換えることもできます。
もちろん、「いまやっている仕事を続けていこう!」と、迷うことなく壁を乗り越えられる人もいます。しかし、多くの人たちが「このままでいいのかなぁ」という曖昧な不安から、ある人は転職を、ある人は留学を、また、ある人は「いっそのことベンチャーを立ち上げよう!」と起業を考えたりする。当然、迷った末に「よし、今の仕事を全力でやっていこう! これが俺の道だ!」と会社の戦力になる決意をする人もいます。
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